Fittingbox(フィッティング?ボックス)は、フランスのデジタルアイウェアを専門とする企業だ。当社の技術はアイウェアを試着する際、度の入っていないフレームの試着を通じてしか購入できなかった課題を、バーチャル眼鏡試着の技術を通じて解決する。日本ではメガネ専門店「JINS」が昨年から資本提携を結んでおり、「JINS」のオンラインストアで実際にFittingboxの試着サービスを利用することができる。
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Fittingboxが本年1月に米国ラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(通称CES)にて発表した「Frame Removal Technology(フレーム?リムーバル?テクノロジー)」は、ユーザーが着用している眼鏡のフレームをリアルタイムで仮想的に取り外し、他の眼鏡を試着することが可能になっている。今回、Fittingboxの歩みとCESで発表されたアップデートについて、当社のセールス、マーケティング、カスタマーサクセス担当グローバルチーフであるDominique BAZIN(ドミニク?バザン)氏にインタビューを行った。
15年に及ぶ開発の軌跡
Fittingboxの技術開発は、16年前に遡る。創業者であるBenjamin Hakoun(ベンジャミン?ハクウン)とAriell Choukroun(アリエル?シュクルーン)の2人は、当時から日常生活で眼鏡をかけていた。そのなかで、眼鏡をかけなければ自分の姿を確認することができないため、新たにフレームを購入するときに、試着した姿を正しく認識できないことにもどかしさを抱いていたという。さらに2人は眼鏡をかけている人の1/3が、眼鏡なしでは自分の顔が見れないという課題も知ったそうだ。これらの課題を解消すべくデジタルミラーを作ることを思いついたことが創業のきっかけとなったという。
「実感していたペインポイントから着想を得て、最初に構想したのはバーチャル試着技術を開発することでした。当時の携帯電話やコンピューターはカメラ機能を搭載しておらず、アイウェアのバーチャル技術がとても複雑であったことから、当時は少しクレイジーな夢に思えたかもしれません」
そして彼らの夢を実現するのに15年。そうして生み出されたアイデアは、拡張現実(Augumented Reality、以下AR)と減損現実(Diminished Reality、 以下DR)を融合することで、処方箋の入った眼鏡を着用したまま自分の好みのフレームを試着し、その姿を実際に見ることができるシステムを構築することだった。そして従来の店舗の鏡を、オムニチャネルの顧客体験を可能にするスマートミラーに置き換えることによって、「物理世界での体験をデジタル世界へコピーする」ために、アイウェアのバーチャル試着技術の開発を続けてきた。
「アイウェアは従来医療目的やファッション目的で利用されてきましたが、バーチャル試着には様々な問題があります。たとえばバーチャル試着には巨大なデータベースが必要になったり、アイウェア業界ではブランドが製品のライセンスを取得していることが多いといった現状もあります。他方で、グローバルエコシステムという意味では非常に興味深いとも言えるでしょう。私たちは長年に渡ってブランドや企業と協業しており、私たちの技術はこのエコシステムの中で活用いただいています」
高精細なアイウェアの撮影技術
彼らの技術の大きな強みは、膨大な12万以上にも及ぶ眼鏡フレームの3Dアセットだ。さらにトレンドや新製品の展開に対応し41000以上のブランドの商品を取り扱い、毎月4000の新しいフレームデータを追加しているという。その結果昨年は9500万回にも及ぶ試着機会を提供したそうだ。
「アイウェアのバーチャル試着技術は、アルゴリズムを構築するために顔の構造を理解する必要があり、フィルター技術のように単純ではなく、とても複雑です。フレームは顔に完璧に配置されなければなりませんし、フレームは着用者にとって適切なサイズである必要があるからです」と、バザン氏は語る。
当社のアイウェアの3Dアセットは、「物理的な製品をデジタル化し、デジタルアセットとして作成する、リバースエンジニアリング」によって作成されているという。具体的には、当社の特許技術である「Photo Studio」にフレームを入れることで、自動的に画像が撮影され、アルゴリズムによってWebに対応した高精細なフレームの3Dアセットが作成される。
さらに当社の提供する「Studiobox Photo」は、これまで取り組んできたフレームの撮影経験を活用したフレーム撮影用ボックスである。製品写真のクオリティを担保し、ブランドなど顧客のニーズに合わせたアイテム撮影を実現するという。「Studiobox Photo」は現在、ヨーロッパに6台、北米に4台、日本にも1台設置されているそうだ。他にもモデルの写真を自動生成する技術も提供しており、これにより商品撮影のコストを削減しながら、顧客のモデル画像へのニーズを叶えることができる。
作成された3Dアセットを試着サービスとして用いる際は、当社の提供するHTML5ソリューションを通じてオンラインストアに簡単に統合できるという。これによりサービス利用者はアプリなどのダウンロードをせず、当社の技術を利用することができる。さらに「利用者がiPad、パソコン、携帯電話などの端末、また全てのブラウザでいつでもどこでもアクセスできるよう、カスタマージャーニーを構築してきました」とバザン氏が述べるように、その正確さへのこだわりに加え、バーチャル試着を行うまでの所要時間を短縮し、数秒で顔を検出しフレームの試着が始まるように設計されている。これによってユーザーは、病院での手続きを待つ間に事前に購入したいフレームを選んだり、出先や自宅で事前に試着を済ませることが可能になる。
「私たちは物理的な世界を破壊するのではなく、グローバルなエコシステムの中で、消費者にオムニチャネルの購買体験の可能性を提供していきたいのです。オープンであり、いつでもどこでも利用可能であること、ビーチであれ、医療の現場であれ、実店舗であれ、眼鏡フレームを試すことができます。そしてそれは最終的に、消費者にとって購入時に試着から生まれた安心感をもたらし、さらに提供側の売り上げの増加に繋がると考えています」
フレームを取り除くDRの実現「Frame Removal Technology」
最近当社が発表した「Frame Removal Technology」は、現実の世界に新しいものを加えるARと異なり、デジタル上で現実世界から要素を除去するDR技術が用いられており、その実装は当社が取得した16の国際的な特許によって実現されている。これによりユーザーは、実際に度の入った眼鏡を着用しながら、リアルタイムで仮想的に着用している眼鏡を取り外し、3Dデジタル化された別の製品の試着が可能となり、さらにその着用姿を確認することができる。
「この技術はFittingbox創業時から、15年以上の年月を経て実現しました。このようにしてできた技術は未だ存在しない技術だといえるでしょう。処方箋の入った眼鏡を着用しながら、別のフレームを試すことができるのは、まるで魔法のようだと思います」
当社は今後、アイウェアで使用されている特許技術を応用し、ジュエリーやヘッドフォンなどのアクセサリーへの参入も検討しているという。
「私たちはアイウェア業界を先導する存在になり、さらにそのエコシステムを構築していきたいと考えています。そして、新しいサービスを提供し続け、データベースを増やすことで、アイウェアのバーチャル試着とDRで1番になるべく事業を拡大していきたいとも思っています」
15年という年月をかけて実現したFittingboxのデジタル試着技術。着用しているメガネをデジタル上で除去し、新たなフレームを試着できる技術は、オンラインでの購買行動が活発化するなかで今後どのように拡大していくのか、追っていきたい。
Text by Hanako Hirata
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