恵比寿駅から南に坂道をしばらく歩くと「WEGO(ウィゴー)」本社1Fスペースにそのショップはある。アップサイクルブランド 「CàYC(サイク)」を取り扱う古着屋「RIENINAL(リィエニナル)」だ。
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このショップはWEGOが運営している別形態なのだが、普通のアメリカ古着屋とは少し考え方が違うようだ。何が違うのかをRIENINAL店長の中島隆博氏に伺った。
自社で出来るサステナブルを追求した新しい古着
「WEGOといえば様々なコラボや若者カルチャーの発信、読者モデルやインフルエンサーの起用、低価格なオリジナル商品を中心としたお店というイメージですよね。若い方はもうその事実を知らなかったりするのですが、実は昔WEGOは古着屋だったんです。
WEGOでは今も変わらず古着の買い付けを行い、現在では路面店を中心に全国30店舗以上のお店で古着を扱っていて、毎月全国のどこかで古着のPOP UPを行っています。
そのWEGOで買い付けた古着の中で極端なサイズのものや、汚れやダメージがある物をアップサイクルするという試みでCàYCというブランドと、同時期にRIENINALという店舗を発案しました。
きっかけになったのは、アメリカに視察に行った際、サステナブルの考え方など、世の中の変化を感じ、まもなく日本にもやってくると思い、自社で出来るサステナブルとはなんだろうと考え、祖業である古着がまさにそうで、この企画を提案したという流れです。なので、アメリカの古着屋を90年代の雰囲気でやりたい、というのとはマインドが違うショップです」
リサイクルではなくアップサイクルがCàYCというブランド
RIENINALの店舗と同時に発案されたアップサイクルブランドCàYC。発案から実際のアイテムづくり、ローンチから商品の発売までのお話を伺った。
「アンティークの家具や雑貨、更に不用品をアートに変えたりする『廃材アート』みたいな物も好きで、それの古着版と言いますか、古着でかたちにしていく事は出来ないかと考えました。あくまで古着自体の特徴、経年変化したものを味(デザイン)として活かしたいと考えていました。
そこで古着を再構築する分野で先駆者的な『ink(インク)』というブランドの岡田さんをCàYCのデザイナーに迎えることにしました。
1からどんな物を作るかのアイデア出しから打ち合わせが始まり、材料をB品の中から選び、発案して『作りましょう』となってから、商品が出来上がってローンチするまで1年程かかりました。
ラインナップはトップス3型、ボトム3型で6型です。全てが1点ものという事や、例えばリバースウィーブは1枚のアイテムを作るのに2枚程使用したり、生地がくすんでいたりする場合は染め直したりするなど、かなり手が込んでいるので、プライスは¥18,000?¥30,000以上するものもあります。
そういった事を含めてリサイクルではなくアップサイクルブランドという解釈で展開しています」
ブームだけでは終わらない、古着は次のフェーズに入った
ただのリメイクではなくデザイナーの手が入り、ハイセンスに仕上げられた1点モノのアップサイクルブランドという概念。その未来のかたちや、何度目かの古着ブームの未来を日々肌感覚で感じでいる中島氏はこう語る。
「CàYCに関しては今の6型の規模からどんどん型数を増やして行くという考えではなく、この6型を活かしながら生地を変えて、1点1点手間暇をかけてスペシャルなアイテムを作っていくような方向性で考えています。
ここ数年の古着ブームは、他でいうとスニーカーブームのような雰囲気に似ていると思います。昔、スニーカーは一部の好きな人のブームだったと思うのですが、今は幅広い年齢層でみんなが熱狂していると思います。そのブームが落ち着いていっても一定のファンや文化が残る。古着も同様にそういった当たり前の選択肢の一つとなる次のフェーズというものに差し掛かっていると思います。
過去の古着ブームは、90年代のヴィンテージブームから次第に安くて個性的なものが買えるというのが、当時の若い子の中で古着のイメージとして定着して行き、その後、2008年頃からファストファッションブームがやってきて、安いという価値観で古着を選んでいた方たちにとってシフトするタイミングになったと思います。新品で更に安いとなると、古着を買う理由がなくなってしまう人もいた訳で、そこで一旦ブームが落ち着いたと思います。
今はSNSがあるので、 ファッションの流行が世界同時におこるようになり、良いと言う価値観が過去無いスピードで広がり、それをインプットもアウトプットもしやすくなった時代だと思います。
他にも昔は古着の値段は古着屋が海外から仕入れ、店舗によっても差はありましたが、今ではSNSやフリマアプリなどが普及したことが市場にも影響しています。携帯があればすぐにこの商品がいくらぐらいの価格、価値なのかというのが調べられるようになり、相場が見える化により差はなくなってきています。
稀少性が高いものは勿論、著名人が着用することで需要が高まり供給が追い付かないことで価格が高騰という流れも近年の傾向です。
フリマアプリといった個人間取引が気軽に出来るようになったことで買っても売れる、安く買って高く売るといった個人バイヤーにとっても古着は魅力的な分野となりました。その2次流通のかたちとSNSの相性の良さというのが、今回のブームの過去にはない別角度の後押しだと思っています。
そして昨今取り上げられるサステナブルというキーワードは、海外では古着を買うという理由の一つにもなってきているので、日本ではまだまだ一握りではありますがそういった意識も徐々に増えてくると思います」
RIENINALに列んでいる古着は毛玉が取られ、プレスをかけられ、ケアが行き届いたとてもキレイなアイテムばかりだ。古着の他80’sの大きなラジカセやアンティークの花瓶なども陳列され、母体であるWEGOのお店よりも客層は10歳程高い。
かつての古着ブームを謳歌した若者が今、古着の未来を指し示すRIENINALという新しいショップに目を向けているのだ。サステナブルとアップサイクルを紐付けたブランドCàYCと共に今後も注目して行きたい。
PROFILE|プロフィール
中島 隆博(なかしま たかひろ)
WEGOに16年勤務、RIENINALとCàYCの企画を立ち上げる。
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