従来リハビリテーションの分野で使用されていたEMS(Electrical Muscle Stimulation)が、フィットネス分野で活用されるようになった。EMS機器による電気刺激と、自ら体を動かす随意運動を組み合わせることで、短時間で効率的なトレーニングができるという。
ADVERTISING
EMSプラス随意運動によるトレーニングのメリットとはどのようなものなのか、筋肥大にも脂肪燃焼にも効果的なのか。日常的に運動をしてこなかった人が取り入れても問題はないのか、アスリートや日々トレーニングをしている人がEMSを活用する方法はあるのだろうか。EMSを活用したフィットネスシーンをリードしている「SIXPAD(シックスパッド)」のブランドマネージャーを務める、熊崎嘉月さんに話を聞いた。
まずは、EMS機器の電気刺激によって、筋肉が動く仕組みを確認しよう。
「人間が運動をするとき、脳からの指令が運動神経を通り、運動神経から電気が流れて、流れた電気が筋肉の筋線維を刺激して筋肉を動かします。電気刺激(EMS)は皮膚の表面から電気を流すのですが、そうすると、運動神経は脳から指示を受けたのと同じように筋肉を動かすのです」
低負荷?短時間で速筋を鍛えることができる
筋肉は大きく、持久力に優れて筋肥大がしにくい遅筋(赤筋)と、瞬発力やパワーに優れ筋肥大しやすい速筋(白筋)に分けられる。簡単に言えば、短距離走や投擲競技の選手が発達しているのが速筋なのだが、EMSは速筋を優先的に鍛えることができるのだという。
「随意運動で速筋にアプローチするとなると、最大筋力の75%程度の負荷をかける必要があると言われていますが、EMSを活用すれば最大筋力の15%程度の負荷で速筋を刺激することができます。これには、電気を流す対象物が太いほど抵抗が少なく、電気が流れやすくなるというオームの法則が関係しています。速筋と遅筋では、前者の方が筋線維の神経が太いのですが、そのため抵抗が少ない速筋に優先的に電気が流れて刺激されるのです」
通常では高重量のウエイトトレーニングなどを行わなければアプローチしづらい速筋を低負荷で刺激できるのは、EMSの大きな魅力だろう。膝などの関節に不安がある人や高齢者でも、筋肥大が見込める速筋のトレーニングにチャレンジしやすしいということになる。
EMS機器による電気刺激と随意運動を組み合わせたトレーニングを、SIXPADでは“ハイブリッドトレーニング”として提案している。
「EMSは筋肥大しやすく糖を消費する速筋に優先的にアプローチし、自分で行う随意運動は脂肪を燃焼する遅筋に優先的にアプローチします。そのため、ハイブリッドトレーニングは、筋肥大を目指したい方と脂肪燃焼をしたい方のどちらにも有効です。
これは論文化もしていますが、随意運動のみのバイクトレーニングとEMSを掛け合わせたものを比較すると、後者の方が、血中乳酸値が最大で約25%、酸素消費量が最大で約17%高いというデータが出ました。つまり、EMSを活用したハイブリッドトレーニングの方が短時間で高い運動効果が得られるということです」
とはいえ、電気刺激ならば何でもいいわけではない。SIXPADの製品では、主に20Hz(ヘルツ)の周波数を採用している(トレーニング内容によって4Hzなども推奨している)。20Hzとは1秒間に20回、0.05秒に1回の割合で、電気刺激を送るということ。筋肉は刺激を受けると収縮して張力を発揮し、次の刺激に備えて態勢を整え、また刺激を受けると収縮する。このサイクルを繰り返せる上限が0.05秒なのだという。
たとえば、50Hz、80Hzという周波数だと、筋肉の準備が間に合わず、結果的に効果は落ちてしまう。周波数が高ければ良いわけではないのだ。
EMSトレーニングを身近にした“エレダイン”とは
SIXPADは、2020年に「Powersuit(パワースーツ)」と呼ばれるEMSトレーニングスーツとオンラインレッスンを組み合わせた、SIXPAD HOMEGYMという自宅用トレーニングサービスをスタート。2021年には腹筋を集中的に鍛える「Powersuit Abs」、ヒップと太ももを効果的に鍛える「Powersuit Hip&Leg」というプロダクトをリリース。いずれもヒット商品となっている。
EMSトレーニングに自宅で気軽にトライできるようになった要因が、「Powersuit」に採用されているエレダインという電極だ。
「Powersuit」登場以前のSIXPAD製品は、専用の高電導ジェルシートを本体に貼り、体へ貼り付けて利用する仕組みだった。ジェルシートは、本体を体に固定する役割と、本体からの電流を筋肉へと伝える役割を果たすものだが、消耗品であり月に1回交換する必要があった。ランニングコストや、買い替えの面倒さがEMSへのハードルになっていたが、エレダインの開発成功がブレイクスルーになったのだという。
「SIXPADが世に登場した2015年から、ジェルシートに代わるものの開発を進めていました。シートを使わない方法として、銀電極を使う方法もあります。銀電極についてもたくさんのサンプルを作り試行錯誤しましたが、金属なので水に弱く、汗や洗濯の影響でどうしても錆びてしまいます。また、金属アレルギーの方が使えないという課題もありました。
利用する度に洗濯ができ、アレルギーの心配もない布を電極にできないかと開発を進めて出来上がったのが、エレダインです。エレダインは染色技法を応用した特殊な加工による導電性繊維を電極にしたもので、通電の安定性、安全性、耐久を備えています」
効果に裏付けのある本物のEMSトレーニング
「本物であること」をミッションとして、ユーザーから信頼を得るために、EMSに関するエビデンス取得に積極的に取り組んでいるのも「SIXPAD」の特長だ。
たとえば中京大学と「随意運動と骨格筋電気刺激の併用が代謝応答に及ぼす影響」「低出力の刺激装置の場合における大腿四頭筋の最適な電極配置」「電気刺激の周波数に関する基礎研究」、金沢大学と「虚弱高齢者の筋肉量とバランス機能へ及ぼす影響」といった国際論文を発表している。
そのほかにも多数の大学や病院、研究機関と協力しながら、さまざまなデータを取得し、国内外の学会で発表を行っている。
今年10月に発表された金沢大学との共同研究の結果も実に興味深いものだ。記憶に関わる脳の海馬で見られ、神経細胞の成長、維持、再生を促すBDNFというタンパク質の一種がある。このBDNFは、筋肉に負荷をかける運動を行った際に体内で合成され、脳の認知機能の維持、改善するとされている。
BDNFには、認知症予防の効果があると期待されていたが、一方で、低負荷な運動では発現量が少ないため高齢者にそれを課すのは難しいだろうとされていた。しかし、低負荷で速筋にアプローチできるEMSの刺激は、血中のBDNF濃度の増加に寄与し、特にふくらはぎへの刺激が有益であることが示唆されたのだ。
EMSを活用したトレーニングは効果を裏付けるエビデンスがあり、トップアスリートから高齢者まで、幅広いニーズに応えることができるもの。競技力アップのためのトレーニングに、健康維持に、上手く役立ててほしい。
PROFILE|プロフィール
熊崎 嘉月(くまざき かづき)
株式会社MTG SIXPAD本部マーケティング部ブランドマネージャー
Text by Fumihito Kouzu
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【Fashion Tech News】の過去記事
足球即时比分,比分直播
アクセスランキング
「シーイン」「ティームー」...中国発格安ECがベトナムでサービス停止