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自転車ヘルメットの「着用努力義務化」で注目を集める、“着るヘルメット”の開発背景

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2022年12月20日、改正道路交通法に関する政令が閣議決定され、2023年4月1日から自転車に乗る人は年齢を問わずヘルメットが「着用努力義務化」になったことで、「自転車ヘルメット」に対する注目が高まっている。

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そうした中で、「"かぶるヘルメット"から"着るヘルメットへ"」をビジョンとして掲げ、自転車ヘルメットにおける新たな文化を醸成しようと取り組んできたのが、自転車用ヘルメットで国内トップシェアの株式会社オージーケーカブトだ。

2019年、安全性に配慮した「SG基準」を満たした女性向けハットタイプの自転車ヘルメット「SICURE(シクレ)」を発表すると、その後もアウトドアスタイルの「DAYS(デイズ)」、そして2022年12月からはキャップタイプの「LIBERO(リベロ)」の発売を開始した。

そこで、今回の法律が決定する以前から「帽子タイプのヘルメット」を開発し、自転車に乗る人の安全性とファッション性の両立に取り組んできた同社の事業について、開発担当の上辻友美さんと、広報担当の柿山昌範さんに聞いた。

"着るヘルメット"を開発したワケ

今春から、自転車ヘルメットの着用努力義務化が決定されたことで同社の注目も高まっているが、"着るヘルメット"の開発は2010年代半ばからスタートしていたと柿山さんは語る。

「もともと、当社の"かぶるヘルメット"から"着るヘルメットへ"というビジョンが生まれた背景には、大人で自転車ヘルメットを着用するのは、スポーツとして自転車を楽しむ方々など、一部に限られていた点にあります。また、製品としてもいわゆる尖った形のスポーツタイプのヘルメットが中心だったことから、一般の方々に着用していただけていないという課題感がありました」

同社は、今回の法律が決まる以前から、警察や自治体と協力した自転車ヘルメット着用の啓発活動を行ってきたが、その際にも「安全性が高いことは理解しているが、あの尖ったヘルメットを被りたくない」という声が多く寄せられたという。そこで、その意見が最も多かった女性に向けて、デザインを洗練させた帽子タイプのヘルメットを開発することにした。

安全性とファッション性を満たす

しかし、いざ開発がスタートすると、まずは安全性において大きなハードルが立ちはだかったと上辻さんは語る。

?まず、日本の安全指標であるSG基準をクリアするのに3年ほどかかりました。規格の認証機関と細かい仕様のすりあわせを行い、デザイン性と機能性?安全基準を両立させることに大変苦労いたしました?

さらに、デザインにおいても帽子とヘルメットの組み合わせは、一見簡単そうにも見えるが難しさがあったという。

「ヘルメットの上に単純に帽子を被せると、かなり大きくなり見た目に影響が出てしまうことがわかりました。そこで、安全基準を損なわないコンパクト性を可能な限り追求しました。帽子メーカーと一緒に開発したのですが、担当企業もヘルメット型サイズの帽子を作ったことはありませんでした。そのため、製作当初は会社の机にサンプルを置くと笑いが起こるほど、とても売り物にはならない形状のものばかりだったことを覚えています。

そして、ヘルメットにピッタリと生地を合わせた、おしゃれに見えるサイズ感の追求と、SG基準の重要な要素である?視野?の確保には想像以上の苦労をいたしました。

安全性に関しては、全モデル共通で、高齢の方でも紐が絡まないように、顎紐はシンプルに止められるようにしています。そして、視野の確保においても各モデル工夫しており、たとえばSICUREは帽子のつばが落ちてこないようにスナップボタンで簡単に止められて、特許も取得しています」

売上は不振、しかし必要なものを売り続ける

開発から3年以上の時間を経て、2019年7月にSICUREが発売された。しかし、認知が全く進んでいなかったことから売上は「乏しかった」と振り返るほど不調。その中でも必ずニーズはあるという考えのもと、すぐさまユニセックスモデルであるDAYSの開発に取り掛かった。

当時について柿山さんは「当社としては、着るヘルメットというビジョンのもと、製品のシリーズ化や多様性の確保は、ファッションアイテムとして必要であると考えていました。また、安全性の観点からも、いずれ法律が変わって自転車ヘルメットが求められるようになればいいとは思っていましたが、仮に今すぐそうならなくても、来たるべき時に必要なラインナップを揃えておくことが、メーカーとしての役目だと思っていました」と振り返る。

その後、同社は認知の向上に向けて、敬老の日に家族から高齢者への贈り物として自転車ヘルメットを送るキャンペーンを張るなど、地道な広報活動を展開。さらに、今回の法律に先駆けて、ヘルメットの着用努力義務化を条例で定めた愛知県などでニーズが生まれ始めたことからも徐々に売り上げを伸ばし、今回のニュースをきっかけに「代理店には次の出荷を待っていただいている状況」となるまでに至った。

今後の展開について

大きな反響を呼んでいる中、現在はこれまでのフィードバックを踏まえた新たな製品の開発中だと上辻さんは明かす。

「たとえば、安全性についてはクリアしましたが、ヘルメットをかぶることが日常となるためには、ヘルメット特有の暑さやムレを改善するために、より通気性を高める必要があります。

また、女子高生や若い世代の子からは、デザインという面で不十分だという声をいただいておりますので、どの世代でも着用いただけるよう、ファッション性も高めていきたいと考えています。

そして、多くの人にとって手が届き、安全でおしゃれに身につけていただくにあたり、費用感を抑えながらクオリティを追求していきたいと思っています」

今春からの着用努力義務化に向けて、ますます注目を集める自転車ヘルメット。同社の取り組みにより、自転車ヘルメットの常識が変わっていくのか、今後も注目していきたい。

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