2023年、Googleなどの米テクノロジー大手企業では前年に勝る「最悪レベル」とも言われるリストラの嵐が巻き起こっています。コロナ禍による特需の効果が薄れ、特にIT企業はビジネスモデルの転換を余儀なくされている状況。一方、ファッション業界にも同じような現象が起こる可能性はあるのでしょうか。
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国内外における人員の削減の現状
米テック業界では、現在大規模なリストラが問題となっています。Layoffs.fyiによると、2022年は約16万人、今年23年は3月1日時点で既に約12万人にのぼるなど驚異的な数字に。さらにMETAは去年に引き続き今年3月16日に追加リストラの計画を発表。合計で2万人規模におよぶ人員削除を行います。
新型コロナウイルスによる巣ごもり需要などの特需で、2年半にわたり急拡大を進めていたIT大手。ここにきて時流の変化により軌道修正の必要性に差し迫っています。
ファッション業界でも、振り返るとコロナ禍による経営破綻により外資、日系問わず多くの企業が2020年以降多くの企業が人員削減に踏み切っています。
2022年11月にはスウェーデンを本拠地に置くH&Mがコスト削減?合理化プログラムの一環として社員を約1500人を削減しました。他にも2022年下半期に、購買が低迷した影響でNeiman Marcus、 PVH、 ノースフェイスを扱うVF Corp.、 Everlaneなどが実施を公表。
国内でもワコールをはじめ、繊維商社のタキヒヨーやワールド、三陽商会や紳士服大手の青山商事など、早期?希望退職の大規模な募集に踏み切った企業は数多くあります。
今後のファッション業界の雇用状況はどうなる?
では、ファッション業界は今後、現在のテック業界のような大規模なリストラの波が来る可能性はあるのでしょうか?先に結論から述べると、それは考えづらいと言えるでしょう。
行動制限が解除されたことでリアル店舗は盛況を取り戻しています。積極的に新規店舗もオープンしていることからショップスタッフの採用状況は2022年以降上向きに。外資系ブランドでは特にその傾向が強く、あるラグジュアリーブランドでは今年に入り業績が好調なことから、数百名規模を追加で採用することを決定。これは今後さらに店舗での取り組みに攻めの姿勢を取るという意思を表しています。
国内の今年の現状として、希望退職者の募集という形による人員削減は2020年、2021年に比べ大幅に減っています。東京商工リサーチのデータによると、上場企業が公表したアパレル?繊維製品関連企業の早期?希望退職者の募集人数は、2020年、2021年ともに電気機器、観光を含めたサービス業を押さえトップに。実施社数としては11社、人数は1万5000人を上回っていました。
それが2022年になると4社、5780人と大幅に減少。業界全体ではその数は2位に下がっています。観光の行動制限の緩和を受けて、インバウンド需要が回復したことによる百貨店の免税売上の向上も追い風となっています。ゆっくりとした速度ではありますが、市場はアフターコロナに向けコロナ禍のダメージからの脱却を目指し、活気を戻しつつあります。
インフレによる影響は余談を許さない
楽観視するには状況はまだまだ厳しいのもまた事実。感染症や世界の情勢についての予測が難しいのはもちろんですが、昨年の下期から原燃料や物流費の上昇、さらには円安の進行により、大半を輸入に頼る衣料品の値上げが大きな懸念点となっています。
食品や日用品と同様、衣料品も値上げが続いています。しかし、顧客離れの懸念からそこに踏み込まず、サプライヤーの人件費の削除という形でコストの帳尻を合わせるという方向に舵をきる企業はこれまでにもありました。今後も同様の流れが起こる可能性については否定できません。
インバウンドによる需要の向上だけに頼ることなく、デジタルシフトとリテール運営の事業バランスなどを取るなど、現在のウィズコロナからアフターコロナに向け柔軟に変化し続けていくことが求められています。
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