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ファッションの多様性はどこへ?画一的な「美」から外れてしまうマイノリティの行き着く先

KANAKO SAKAI 2024SS Collection

Image by: FASHIONSNAP(Ippei Saito)

KANAKO SAKAI 2024SS Collection

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ファッションの多様性はどこへ?画一的な「美」から外れてしまうマイノリティの行き着く先

KANAKO SAKAI 2024SS Collection

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ジャーナリスト
徳永啓太

 私がファッションウィークで期待することは「新しい美の価値観」と「ファッションで夢をみられるか」という期待と願望である。本来なら、洋服のディテールやショーの演出などを分析して「服」を伝えるべきだと思うが、「服を着る人」「ファッションを楽しむ人」を主軸にして私の考えをレポートさせていただけたらと思う。まずファッションウィーク初日より5ブランドをありがたく拝見させていただいた。高級感のある素材を生かし、それぞれのブランドが多様な表現と技術で素晴らしいコレクションを発表していることは十分伝わってきた。ただ一つ疑問に残ったことがある。

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 「ファッションの多様性はどこへ?」

 2018年ごろから世界中でSDGsの一環である「人権」に注目が集まり、世界的なメゾンでは白人モデルで一色だったのが、アジア人や黒人の割合を多く起用し、その後には様々な年齢や体型を持つモデルも登場。「ボディポジティブ」という言葉が聞かれるようになったのも「プラスサイズ」という言葉が生まれ、カテゴライズされるモデルが有名雑誌の表紙を飾り「自分の身体を愛そう」という動きが起きているからだ。現在でも人種の多様性は世界中のブランドが意識しているが、年齢やプラスサイズはブランドのイメージやコンセプトにより多様の振り幅を変えているようだ。この流れをもとにファッションウィークを振り返ってみる。

KANAKO SAKAI 2024SS Collection

Image by: FASHIONSNAP(Ippei Saito)

 まずは今シーズン「JFW ネクスト ブランド アワード(JFW NEXT BRAND AWARD)」で受賞を果たし、ブランド初のコレクションショーを行なった「カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)」これまでのルックや経歴を見るとレディースブランドであることがわかるが、ショーではモデルの半分が男性を起用。特にタトゥーの入ったモデルが煌びやかな素材でフリンジの効いたワンピースを着ている珍しい組み合わせに魅力を感じた。男性モデルが露出の多いドレスを着ることで「アイテムに男女の境界はない」というデザイナーの意図を受け取れる。しかし現在、社会でジェンダー論が議論される中でも特にトランスジェンダーが差別される事件が起きている。「ファッションは自由であり男女はない」と我々はアプローチするものの、現実は追いついていないのが現状である。

KANAKO SAKAI 2024SS Collection

Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

 こういうとき、通常なら「ジェンダーレスなアイテムを展開」と表現することがファッションレポートの基本であると思うが、もう少し掘り下げて、男性がレディースのワンピースを着て街を歩いても差別のない世の中であってほしいという期待と、当事者がこのルックを見て、ファッションの挑戦や自由の解放など「夢」を膨らませてほしい。社会で起きている差別に向き合いファッションの力で「美」の価値観を変えることができれば、それは「夢」ではなく、自己実現に変えられる。「カナコサカイ」は王道のエレガントさで勝負に挑んだからこそ、セクシャルマイノリティへの希望になってほしい。社会との関連を深く考えたコレクションであった。

?KANAKO SAKAI 2024年春夏コレクション

 そして初日の最後を飾った「フェティコ(FETICO)」。女性からの支持がある人気のブランド。会場にはフェティコの服を着ている人が多く、ファンからのブランド愛を肌で感じた。今シーズンは露出度が多いアイテムが多く、男性である私目線だと「エロティズム」としてのレイヤーが入ってしまいファッションとして真正面から見ることができなかったが、その中でも「エロティズム」という男性から消費されてしまう「性」よりも女性であることをポジティブに働かせ、クールという意味も込めた「セクシー」と感じ取れるドレスも登場。露出度の多さと女性らしさを打ち出しているところを見ると「女性性をポジティブに」という意図があったことは私でも理解ができた。このブランドで気になったのは「どんな女性をポジティブにしたいのか」。モデルは全て細身のいわゆる「従来の美しい体型」をしていた。新作発表を展示会ではなくショー形式を選んでいるのであれば、もう少し風呂敷を広げて、様々な身長や体格、はたまたトランスジェンダーなど「女性性」を持ったモデルが登場すれば、よりメッセージの強度を持ったアプローチができたのではないだろうか。男性の私にも「女性性をポジティブに」という意図を直感的に汲み取れたであろう。

FETICO 2024SS Collection

Image by: FASHIONSNAP

FETICO 2024SS Collection

Image by: FASHIONSNAP

FETICO 2024SS Collection

Image by: FASHIONSNAP

 冒頭で述べたようにこれはあくまで私の願望と期待である。ブランドはビジネスを継続させるためにショーを行うわけであり、私たちに多様な希望や夢を見せてくれるものではない。ビジネスとなるとブランドそれぞれにターゲットがあり、それに合わせてサイズ展開を絞らないといけない。社会で起きている問題に対してアクティヴィスト的な意識を持って包括的に問題解決を行うことは厳しい。つまりビジネス面で言うと、いちブランドが多様性を理解しアプローチすることは現実的ではないと言うことだ。

 初日に拝見したショーでは「従来の美しさを持ったスタイルのいいモデル」しか登場しなかった。これを偶然と取るか、必然と取るか。必然ならばファッションの多様性はどこへ行ったのか。私は車椅子を使用している身体的マイノリティであるので、多様性が謳われ「美」の価値観が転換するファッションの未来に希望を持っていたが、もしかしたら一過性の価値観だったのかもしれない。画一的な「美」から外れてしまうマイノリティの行き着く先は、メタバースという未知なるユートピアなのかもね。

?FETICO?2024年春夏コレクション

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