今やコーディネートに欠かせないアイテムとして幅広い層に愛されているジーンズ。ワークウエアとしての誕生から150年を超え、セレブにまで愛用されるようになったジーンズは、どのような発展を遂げてきたのか。ジーンズが伴走してきたカウンターカルチャーの歴史とともに、その変遷を紹介します。
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目次
ジーンズとは? デニムとの違い
ジーンズについて語る時に、「デニム」という言葉もよく用いられます。両者は同じ意味で捉えられがちですが、実は根本的に意味が異なっています。
「ジーンズ」は、イタリアのジェノバという街で生産されていた「ジーン」という生地で作ったパンツのことを指します。一方、「デニム」は、フランス南部の街?ニームで作られた織物を指す“serge de Nimes(セルジュ?ド?ニーム)”が語源となっています。「ド?ニーム」の部分がなまって「デニム」に変化しました。
生地の特徴にも違いがあり、デニムは厚地織布で裏側が白くなっていますが、ジーンは細綾の丈夫な綿布で表裏が同じ色になっています。
ジーンズはいつ生まれた?
生地としての誕生は、ジーンが1567年頃、デニムが1593年頃まで遡ります。アメリカでは、ジーン生地を使ったパンツが1783年から製造されていましたが、現在のような形になるのはさらに後。1873年、ドイツからの移民で織物業を営んでいたリーバイ?ストラウスとベン?デイビスの祖父でテーラーを営んでいたヤコブ?デイビスが、金鉱で働く労働者のためにデニム生地をリベットで補強したパンツを開発し、これが現在まで続くジーンズの原型となりました。このパンツは労働者の間で普及しますが、ファッションアイテムとして浸透するようになったのは、ジェームズ?ディーンやマーロン?ブランドら映画スターが着用するようになった1950年代以降のことです。
1960年代前半 モッズとホワイトジーンズ
1960年代前半、イギリスでは労働者階級の若者の間でモッズムーブメントが巻き起こり、ファッションにも大きな変化が見られるようになりました。細身のスーツを颯爽と着こなすモッズにとって、ワークウェア然とした従来のジーンズはワイルドすぎるため、スタイリッシュな白いジーンズが受け入れられるようになりました。この流れを受けて「ホワイトリーバイス」や「リー?ウエスターナー」といったパンツが爆発的な売り上げを記録し、アメリカ発のジーンズメーカーが次々とヨーロッパに進出を果たしました。
1960年代後半 ヒッピーとベルボトムジーンズ
1960年代後半、アメリカではベトナム戦争や人種差別、核兵器開発の加速などで社会や政治に対する不満が蓄積し、若者たちの間でヒッピームーブメントが開花。自由や平和を愛する彼らの価値観は、映画や音楽、アートなどカルチャー全般に大きな影響を及ぼします。ファッションにおいてもボヘミアンやエスニック、花柄など、プリミティブなスタイルが好まれ、そこに合わせるジーンズもデザイン面で新たな節目を迎えます。裾が大きく広がったベルボトムは既存のファッションに対するアンチテーゼとして受け入れられ、俳優やミュージシャンなど著名人にも広く愛用されました。日本でも1970年代前半に流行し、多くの国産メーカーが製造に取り組んでいました。
1970年代前半 パンクとダメージジーンズ
ヒッピーカルチャーが1970年代前半でピークを迎えると、カウンターカルチャーの主軸はパンクへと移行。ヒッピーの思想や商業的な音楽シーンに対抗するパンクロックは、アメリカ東海岸を中心に盛り上がりを見せます。ラモーンズやテレビジョンなど、代表的なバンドは、いずれも古着やスニーカーなど、ラフなファッションを着用し、ファンにとっても身近な存在として人気を高めていきました。パンクの火は、やがてイギリス?ロンドンでもムーブメントを巻き起こします。破れたスリムジーンズや安全ピン、ガーゼシャツなど、セックス?ピストルズのマネージャーであるマルコム?マクラーレンとヴィヴィアン?ウェストウッドが考案したファッションは、瞬く間に若者たちに浸透していきました。パンクファッションにおけるジーンズは、ダメージ部分に自分でパッチワークや補修を行うのが特徴の一つとなっています。
1970年代後半 カウンターカルチャーからメインカルチャーへ
ワークウエアに始まり、若者たちの文化に寄り添ってきたジーンズは、ハイファッションのシーンでも注目を集めるようになります。アルマーニの「アルマーニジーンズ」、ラルフローレンの「ラルフローレンジーンズ」、キャサリンハムネットの「デストロイジーンズ」など、さまざまなデザイナーがジーンズを制作。1990年代中盤からは、刺繍やペイント、プリントなどの加工が施され、よりデザイン性を強調したプレミアムジーンズが台頭。ハリウッドスターやセレブの愛用者が急増しました。
TEXT:伊東孝晃
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