スタイリング提案にも注力する。コットンカシミヤにガーゼテレコの重ね着は生地感が際立つとして推す
ほぼ日(東京、糸井重里社長)が10月に立ち上げた「タオナス」は、〝見切り生地?が主役のアパレルブランドだ。高品質ながら様々な理由で行き場を失った生地に光を当て、その特徴を生かした服を作る。コンセプトが共感を呼び、消費者だけでなく生地在庫に頭を悩ませる企業からも注目されている。
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(橋口侑佳)
起点は生地
同社でアパレルブランドの生産管理を務める杉原奈津世さん、企画進行などを担当してきた佐伯日菜子さんが手掛ける。二人が最小人数で回せるアパレルブランドの立ち上げを模索していた時に、生地メーカーや商社が抱える見切り生地の存在を知った。海外有力ブランドの定番品など、品質は確かだが「原材料の高騰により今までの価格では生産できなくなった」「過剰生産で在庫になってしまった」生地だ。
タオナスの商品企画は生地が起点になる。例えば、第1弾の中心であるハイゲージコットンカシミヤは、元々丸編みメーカーの小野莫大小工業が海外ブランドに定番で売ってきたもの。80番手の細い綿糸とカシミヤの混紡糸による緻密(ちみつ)な天じく編みで、繊細なシアー感とスラブの豊かな表情に高級感がある。柔らかくなめらかな質感から「肌に触れるアイテムに」とロングTシャツ、ワンピース、カーディガンにした。
アイテムは他にガーゼテレコのロンTとワンピース、ウールヘリンボーンのワイドパンツがある。ハイゲージコットンカシミヤとガーゼテレコは生機が手に入ったため、高級服地に多い白や黒は避け、ライムイエローや紫、「ニュアンスの出るグレー」を揃えた。
見切り生地の在庫をすべて買い取るなどの条件で通常より安く仕入れ、手に取りやすい価格に抑えた。主力のトップは9000~1万9000円で、今後も1万円台を充実させる。ターゲットは「セレクトショップのオリジナルブランドを買う、シンプルだけどちょっと個性のある服を求める30~40代女性」で、ウェブメディア「ほぼ日刊イトイ新聞」の読者層より若い世代だ。
多くを語る
見切り生地の在庫には限りがあるため「基本的に売り切り」。シーズンは設けず、不定期に新作を出す。第1弾は3素材で9アイテム、1色当たり数十着となったが、今後は出合う生地によって型数もその奥行きも「どんどん変えていく」。作る服も生地に応じて変わるが、「品の良さ」を大事にした生地選びやデザインは今後も貫く。
EC「ほぼ日ストア」で扱い、販売開始直後から上々の売れ行きだった。サイト内の記事ではブランドを始動した経緯、その生地を選んだ理由など「過程をあえて正直にさらけ出している」。ほぼ日の強みである「多くを語るところ」をタオナスでも特徴にする。今後は百貨店の期間限定店など商品に直接触れる場も設けたいという。
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