今年のお買い物を振り返る「2024年ベストバイ」。2人目は、食いしん坊のための体験型メディア「ダンチュウ(dancyu)」で副編集長を務める仁田恭介さん。2023年にダンチュウを発行する「プレジデント(PRESIDENT)」社に入社する前は、ファッション&カルチャー雑誌を中心にエディター?ライターとして活躍されていた仁田さんは、食だけでなく、ファッションやヴィンテージにも精通する人物。2024年に買ってよかったモノ5点を聞きました。
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Vermont Tubbs ロッキングチェア
FASHIONSNAP(以下、F):1品目はアメリカ?バーモント州のスノーシューブランドの「バーモント?タブス(Vermont Tubbs)」によるロッキングチェア。とても珍しいアイテムだそうですね。
仁田恭介(以下、仁田):実は10年ほどずっと狙っていたものなんです。「エルエルビーン(L.L.Bean)」や「シアーズ(Sears)」などの1940?50年代アメリカのカタログにイラストとして掲載されていて、その存在を知りました。スノーシューのメーカーが、家具をつくっているというのはアメリカではよくある話みたいですね。この「バーモント?タブス」はそのうちの1社です。いろいろと探して、海外のオークションサイトで見つけたものは40万?50万円と高額だったので、いつか手に入れたいと思っていたんです。
F:その“いつか”が今年訪れたんですね。
仁田:はい。ヤフオクでキーワードを登録していたら、1月に引っかかりました。10年越しの一本釣りです(笑)。出品者が値付けを間違えていたのか、約5万円で手に入ってしまって。日本のヴィンテージ家具屋で状態の悪いものは見たことがあったんですが、まさかこんなにきれいなものが安値で出てくるとは驚きました。
F:それはラッキーでしたね。脚の部分がスノーシューの形になっていて、背面も特徴的なデザインですね。
仁田:牛皮をロウ引きしてねじった頑丈なローハイド(なめし加工のされていない皮)になっています。座面を傷つけるのが怖いので、京都の老舗「洛中髙岡屋」の京座布団を合わせています。いろいろ探した中でジャストサイズのものが見つかりました。今はリビングで映画を見るときに使っています。
F:ほかにもヴィンテージチェアを集めているんですか?
仁田: 集めているということではないんですが、今年はイギリスの1950年代製「アーコール(ERCOL)」クエーカーチェアも買いました。あとは北欧家具を中心に「カイ?クリスチャンセン(Kai Kristiansen)」のダイニングチェアや「イルマリ?タピオヴァーラ(Ilmari Tapiovaara)」のドムス チェアもありますし、「パシフィックファニチャーサービス(Pacific Furniture Service)」の椅子も持っています。
Trapper Nelson ウッドフレームバックパック
F:2品目の「トラッパー ネルソン(Trapper Nelson)」のウッドフレームバックパックも、ヴィンテージの掘り出し物ですね。こちらはどういったものなんですか?
仁田:現代のバックパックの原型と言われるもので、昔のボーイスカウトやアウトドアのシーンで使われていたそうです。それ以前は背負子で荷物をくくりつけていたので、その名残で木製フレームがついています。付属の鉄の棒はキャンプで薪をいじるときに使用できるもので機能性もあって。こちらは1940?50年代に作られたものです。
F:珍しいものなんですね。実際に使用されているんですか?
仁田:いいえ、観賞用です。これを含めて4つ持っています。大ファンのイラストレーター、小林泰彦さんが1983年に出した名著「ほんもの探し旅」(ヤマケイ文庫)に載っていて、いつか欲しいと思っていたところ、15年ほど前に中目黒にあった「ロク(6)」というヴィンテージショップで初めて購入してから、部屋に飾っています。国内に熱狂的なコレクターのライバルがいて、状態のいいものはなかなか手に入らないんですが。
F:今年購入されたこちらはどこで手に入れたんですか?
仁田:ついこの前、アメリカのオークションサイトで落としました。中のポケットのフラップに前の持ち主が取り付けたようなタブがあって、そこに愛を感じました。大事に使われていたんだと思います。
F:価格はどのくらいするものですか?
仁田:こちらは3万円ほどでした。このご時世でこのバッグを実際に使用する人はいないので、状態の悪いものだと8000円くらいで購入できるんですよ。
F:これからも集めていく予定ですか?
仁田:もうこれ以上、きれいな状態のものには出合えないと思うので、一旦蒐集はストップしようかなと。でも、このキャンバスの部分が赤色のバックパックも存在していてかっこいいんですよ。それはまだ持っていないのでいつか手に入れたいですね。
福田敏雄 ベッコウ漆わん
F:こちらは輪島塗り職人の福田敏雄さんによる漆器ですね。どのように出合ったのでしょうか?
仁田:料理研究家で漆わんをふだん使いしている方を見て素敵だなと思って、自分に合うものを探すようになりました。僕の場合は寒くなると朝食に具だくさんの豚汁を作るので、たっぷり入る大きめのサイズで、手が熱くならない高台仕様、そして口当たりの良いものをピンポイントで探していたところ、こちらを見つけて。10月に京都の器の専門店で購入しました。
F:気に入ったポイントは?
仁田:絶妙なサイズ感で、伝統的な漆塗りっぽくないところですね。汁物だけでなく、ごはんや煮物も入れて、毎日使っています。高台なので寒い日でも汁物が全然冷めないし、持ちやすい。価格は1万8000円くらいでした。長く使うつもりなので、そう考えたら高くないです。
F:ダンチュウに携わるようになってから、食器にもこだわりを持つようになられましたか?
仁田:ダンチュウは食いしん坊のためのメディアなので、食器にフォーカスすることはあまりないんですが、僕の場合はほぼ毎日自炊をするので、「この器でこの料理を作りたい」と思える器は買います。あれもこれもというわけではなく、モノ全般に言えますが、長く付き合えるものがいいですね。今年は木工作家の山口和宏さんによるパン皿も購入して、気に入っています。
ミタケボタン 真ちゅうボタン
F:続いてのお品は、こちらのジャケットに取り付けた「ミタケボタン(Mitake Buttons)」の真ちゅうボタンですね。
仁田:「エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」のネイビーのジャケットが大好きで6着持っていて。これに真ちゅうボタンを付けたら、オリジナルの紺ブレができるんじゃないかなと思ったんです。
F:こちらのボタンの絵柄はどんなものですか?
仁田:王冠を被ったライオンのボタンを冬用のジャケットに付けて、ユニコーンの絵柄のものを夏用のジャケットに取り付けました。職人の手で作られていて、この緻密な彫りは日本でも限られた職人のみができる技術だそうで。真ちゅうなので使っていくうちに経年変化が楽しめる部分もいいんです。
F:エンジニアド ガーメンツのジャケットはなぜ好きなんですか?
仁田:つくりがいいし、飽きないからです。秋冬のものは定番のベイカージャケットで、このモデルはアメリカの警察や消防署の制服に採用される「メトカフ ブラザーズ(Metcalf Brothers)」社製のユニフォームサージ(ウールサージ)を使用しているんです。動きやすいし、丈夫だし。これが紺ブレになったら最高だなと思って。
F:ミタケボタンは老舗ボタン専門店ですが、よく行かれるんですか?
仁田:はい。ミタケボタンがずっと大好きで、ふだんからシャツのボタンは好みのものに自分で付け替えています。
F:人と被らなくていいですね。
仁田:誰かと服が被ると気分が下がるんですよね。自分でカスタマイズすれば、そういうことも無くなるし、愛着もわきますから。次は東京都文京区にあるべっ甲の専門店「大澤鼈甲(Osawa Bekko)」のボタンを茶色のジャケットに合わせたいなと思っています。
DRIES VAN NOTEN スクールマフラー
F:ラストは「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」の過去のコレクションに登場したアーカイヴのマフラーですね。
仁田:2008?14年頃のコレクションでプレッピーなストライプのスクールマフラーをリリースしていて、それが本当にかっこいいんですよ。配色も、ストライプのバランスも、生地感も、どれも完璧なんです。
F:今日はこれまでに購入された4種類のマフラーをお持ちいただきましたね。
仁田:僕はボーダーコリーという犬種の犬を飼っているんですが、誕生日にドリスのスクールマフラーを着けて撮影するのが恒例行事になっているんです。その愛犬のケリーが今4歳で、4つ目を手に入れたところ。まだほかにもマフラーの種類があるので、毎年1つ買い足していく予定です。
F:素敵な習慣ですね。今年購入されたグリーンのものはどちらで購入したんですか?
仁田: 高円寺の古着屋で見つけました。こちらはメリノウール100%で、ほかはアルパカやウール製など異なる素材で出来ています。
Image by: 仁田恭介提供
F:ドリス ヴァン ノッテンがお好きなんですね。
仁田:唯一好きなデザイナーです。純粋に服のデザインで勝負しているところに好感が持てます。広告に頼っていないところもいいですよね。ロゴを主張するTシャツを作るようなラグジュアリーブランドは苦手なんです。
F:今年はドリス本人がデザイナーを退任されましたね。
仁田:さみしいですね。ロゴTシャツを作るようなブランドにはなって欲しくないですが。今後どうなっていくのか気になります。
今年を振り返って
F:今年はどんな年でしたか?
仁田:買い物面では欲しかったものが手に入るラッキーな年でした。
F:来年、狙っているアイテムはありますか?
仁田:久しぶりにバイクに乗りたいですね。「ホンダ(Honda)」にモンキーという小さなかわいいバイクがあるんですが、今季リリースされた「モンキー125 パールカデットグレー」がめちゃくちゃ洒落ていて。それを買ってカスタムしたいなと思っています。
F:仕事面では、来年ダンチュウで仕掛けることはありますか?
仁田:来年から食雑誌ダンチュウは月刊から季刊に変わります。月刊号は自分が特集班長を担当した12月6日発売の「ねぎはご馳走。」号で最後で、来年2月号の日本酒特別号から年に6回発行(年4冊と日本酒特別号2冊)になる予定です。今後はウェブ、イベント、EC、リアル店舗など様々なメディアを活用して、「食の総合プロデュース業」を展開し、いろんな角度から食を提案できたらと考えています。
F:現在、注力していることは?
仁田:現在約3万人いる読者組織「ダンチュウ 食いしん坊倶楽部」での交流を深めていくことです。最近はLINEオープンチャットを開始しました。みんなで食のことを自由に語り合って、盛り上げて行きたいなと思っています。
■仁田恭介?
1983年、埼玉県生まれ。映像制作会社と出版社勤務を経て2009年からフリーランス。エディター?ライターとして雑誌やカタログ、広告、WEBなどを中心に活動。2023年6月、プレジデント社に入社。ダンチュウ編集部に所属し、副編集長を務める。
インスタグラム:@kyosuke_nitta
photography: Masamichi Hirose
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