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【2024年ベストバイ】ファッションエディター 大平かりんが今年買って良かったモノ

 今年のお買い物を振り返る「2024年ベストバイ」。4人目は3年連続のご出演となるファッションエディターの大平かりんさん。「365日同じコーディネートはしません?」をモットーにInstagramに私服を投稿し、多くのファンを獲得しています。「トレンドの大きな変化を感じる1年だった」と振り返る大平さんの、2024年に買ってよかった7点は?

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THOM BROWNE セットアップ

FASHIONSNAP(以下、F):1点目はかりんさんのベストバイでは初登場の「トム ブラウン(THOM BROWNE)」ですね。

大平かりん(以下、大平):トム ブラウンは憧れでずっと欲しいなと思っていて、今年は春に家族のセレモニーがあったのでそれに合わせて思い切って購入しました。

F:トリコロールがとても可愛いです。こちらは一式揃えて購入されたんですか?

大平:そうなんです。これの他にニットとネクタイ、靴下のスーツセットで購入しました。仕事でアメリカに出張した際に現地で購入したのですが、初めてで何を買えばいいのか分からなくて友だちに全部見繕ってもらったんです。

F:トム ブラウンはこれまでにも買うことはあったんですか?

大平:いや、全然持ってなかったんですよ。ただ、ニューヨークの同僚で着ている人が多くて、働く大人の女性のユニフォームとしてかっこいいなと思っていたんです。一式で揃えて着ているというよりはジャケットやスカート、バッグなどでさりげなく取り入れていてトリコロールが見えた時に「あっこれトム ブラウンだったんだ」と気づけるくらいの、いい塩梅に主張できる感じも含めてモダンで今っぽいなと感じていました。

F:確かにトム ブラウンをオフィスで着るってすごくかっこいいですね。

大平:そうなんですよ。特にニューヨークは本場なのでそのスタイルがとても参考になりましたね。

F:ちなみに総額でおいくらくらいでしたか?

大平:今年の初めに購入したので覚えていないんですよ。ただ高級なのは間違いないです(笑)。

F:セレモニーで着用された時は周りの方の反応はどうでしたか?

大平:グレートーンのスーツスタイルが他にいなかったので、大変褒めていただきました。

大平かりんさんのInstagramより

F:ちなみに足元は何を履かれたんですか?

大平:「シモーン?ロシャ(Simone Rocha)」のローファを合わせました。その時はただ組み合わせただけだったのですが、ちょうど今の秋冬の時期にかけてエレガンス回帰のムードを感じていて、ローファーもすごく愛用しています。こちらのセットアップもニットを別のものにして組み合わせたり、スカートと靴下は揃えて色々なトップスを合わせたりするなどしてアレンジを楽しんでいます。

TSTS ソックス

F:2点目は「ティーエスティーエス(TSTS)」のソックスですね。2023年にデビューした注目ブランドですよね。

大平:そうですね。こちらは展示会で見て可愛いと思って全色購入しました。今年は膝上のショートパンツや先ほどのトム ブラウンのスカートのように膝丈くらいのスカートを履く機会が増えたのでそれに合わせてますね。シューズも細身でエレガントなものをよく選んでいて、こういう靴下を履くことも多くなったんですよ。

F:そういうスタイルにはとても映えますね。

大平:もちろん、「プラダ(PRADA)」や「ミュウミュウ(MIU MIU)」みたいに黒のソックスを合わせるのも可愛いのですが、これを見た時に「逆にこれを合わせたら面白いかも」と思ったんです。

F:長さが結構ありますね。

大平:そうなんですよ。だからクシュっと縮めて履くこともできるんですよ。

F:カラーバリエーションも魅力的ですね。

大平:はい、こういう柄だと白や黒が定番になってくるのですが、この色味は合わせ方によって全然印象が変わるので気に入っています。足元で遊びたい時にすごく使える小物です。

SIRI SIRI バングルとリング

F:3点目はアクセサリーですね。素材は何ですか?

大平:「シリ シリ(SIRI SIRI)」というジュエリーブランドのもので、バングルはアクリル、リングはガラスですね。実は金属アレルギーを昔から持っていて全くつけられなかったわけではないのですが、年々ひどくなっていて以前購入したジュエリーをつける機会が減ってしまったんですよね。

F:シリ シリを購入されたのは初めてですか?

大平:プレゼントしてもらったことはあるのですが、自分で買ったことはなかったんです。私、今年からお茶を始めたんですよ。その中で日本文化における花や建築、芸術などに触れる機会が増えたのですが、もっと学びたいとか触れたいと思った時にお茶席を避けては通れないんですね。例えば、由緒ある焼き物に直に触れたい時やそれを作っている方のお話を伺いたいと思った時にもお茶席に参加するというカルチャーを知りまして、和装に合うものを意識して選ぶようになりました。特にシリ シリは神宮前に店舗を構えている着物ブランド「ザ?ヤード(THE YARD)」にも卸していたり、コラボレーションの帯留めや羽織紐なども作っているので和装との親和性が高いデザイナーズジュエリーという認識があったんです。

F:クリアですがインパクトがありますね。

大平:インパクトもあるし、涼やかな感じが気に入ってます。歳を重ねていくにあたり、身につけるジュエリーの数が増えたり、大ぶりのものを選ぶ傾向があると思うのですが、私もそのくらいの年齢に差し掛かってきたのか、インパクトがあり華やかな席でも装いが寂しくならないものと考えた時に、このデザインはぴったりだなと手に取りました。

F:ブランドの商品でもこういったクリアなデザインが多めなのでしょうか?

大平:多いです。デザイナーの岡本菜穂さんがスイスを拠点にされているので、自然からインスピレーションを得た造形が目立ちますね。そういった視点もそうですし、装いを引き立てながらも存在感があって技巧やクラフトマンシップを感じる部分にも惹かれています。

F:雑談になってしまいますが、お茶に興味を持たれたきっかけは?

大平:お花の先生に出会ったのがきっかけなんです。花士(はなのふ)の珠寳(しゅほう)先生という銀閣寺で初代花方を経て、現在は草木に仕える花士として、大自然や神仏、時、人に花を献ずることを国内外で続けている女性の方です。先生は日本の伝統文化の一つ「いけばな」の源流ともいうべき花形「たてはな」が生まれた室町時代、足利義政公の時代の造詣が深く、先生のお話を伺うと、花だけでなく、香、建築、能、歌、絵、工芸など横軸でつながる日本美の原点を学ぶことができるんです。さらにその文化を100年と続けていくためには何をするべきかを真剣に考えてらっしゃって、日本文化の総合的な教養を深めるための講座を企画されたり、国際的な文化交流プログラムや業界を超えたコラボレーションを実現したり。先生の教養、バイタリティ、人柄にハマっちゃって…。

F:ハマっちゃったんですね。

大平:はい、日本文化サポーターに私もなるぞ、と(笑)。先生のご好意で今は教場にも参加させていただいてます。教場では実際に花を立てるのですが、これが頭と体を使っての探求で面白い。頭でイメージが湧いていても、花そのものの個性やエネルギーがあるわけで一筋縄ではいきません。そんなとき先生は、場や先人や自然の力を得ることで、気付きやひらめきが生まれると教えてくださるんです。頭で花の形を作るのではなく、足利義政公の感性を自分に降ろしてみたり、人智を超えた自然界の情景を想像してみたり。委ねることではじめて調和が生まれる、この感覚を教場では体で覚えていく。

F:深いですね!

大平:ファッションデザイナーの仕事にも通じるところがあると思いませんか?自然からインスピレーションを受ける部分や、先人へのオマージュを用いながら現代の人々の心を打つものを作り続けるところとか。でも一方で日本文化の歴史って700年もあるからそれに比べるとファッションの歴史って浅く感じるくらい。だからこれは勉強のしがいもあるし面白いぞ!と思ってハマってます (笑)。

F:本当に毎年多趣味で楽しそうです。

SAGAN Vienna バッグ

F:お次はオーストリア?ウィーン発のバッグブランド「サガン?ヴィエンナ(SAGAN Vienna)」のバッグですね。

大平:初めてウィーンのお店に行ってそこで購入したバッグです。ショップで掛かっているのを見て花入れにも見えるオブジェ感が可愛くて綺麗だなと思ったのと、インドで編まれたものだと知ってそのクラフトマンシップにも惹かれて購入しました。いつか着る和装にも合うかなと(笑)。

F:形が日本らしいというわけではないものの、全体的に日本らしい雰囲気が漂っているのが素敵ですね。

大平:和洋折衷のプロダクトは今本当に魅力的なものが多いですよね。私は銀座の和光本店のリニューアルした地階フロアで取り扱っているアイテムが好きです。サガン?ヴィエンナをはじめとする欧米文化と日本文化のインテグレーションを繰り返した、新しさ感じるグローバルモダンなプロダクトに出会えますよ。

F:かりんさんらしいモード感が出るものというよりも少しナチュラルな印象ですね。

大平:そうですね、だけどちゃんと目立ちます。日本独自の美意識って他の国にはないてとてもユニークなものなので、存在感がある。

F:どういったスタイルに合わせますか?

大平:今の気分だと、フィービー時代のセリーヌですね。

VERDYと角田裕毅選手のコラボグッズ

F今年の8月に発売されたVERDYさんとF1レーシングドライバーの角田裕毅さんのコラボレーショングッズ、角田さんのファンということで購入されたのでしょうか?

大平:角田さんは世界で20人しかいないF1レーサーの唯一の日本人ということで凄く応援していますし、尊敬もしています。その角田さんが日本を代表するグラフィックデザイナーのVERDYさんとコラボするというのが熱いなと。渋谷PARCOのポップアップ限定で販売されていました。

F:VERDYさんがスポーツの分野でコラボしているのは目新しさがありますね。

大平:F1×ファッションは引き続き進化中で、5月のマイアミGPではF1の公式サプライヤーである「プーマ(PUMA)」と、プーマのグローバルアンバサダーであるエイサップ?ロッキー(A$AP Rocky)によるモータースポーツのエッセンス全開のコラボコレクションが発表されました。派手で私好みでした。

F:見てみたいです。

大平:それでいうと私今年に入ってから相撲にハマっちゃったんですよ!

F:相撲にもハマっちゃったんですか(笑)。

大平:そう!相撲アパレルもこれから注目を浴びると思います。今着ているこのTシャツも面白くないですか?

F:こちらはコラボアイテムですか?

大平:これは国技館に売っているオフィシャルのTシャツで。Instagramに投稿したら「どこのですか?」「欲しいです!」って沢山メッセージをいただきました(笑)。

F:シャツとの組み合わせが凄く可愛いですね。ちなみにこのVERDYさんと角田さんとのコラボアイテムで特に気に入っているのはどれですか?

大平:絞れない。普段着で着られてナチュラルに推し活ができるということで「ここからここまで!」って感じで購入しました(笑)。

F:何気ない時に着られるものは嬉しいですよね。かりんさんはジャケットの下にパーカーを着用されているイメージもありますが、これもそんな感じで着用されているんでしょうか?

大平:そうですね。世界で名を知られている2人のコラボは、同じ日本人として凄く嬉しかった。海外に行く時にドヤ顔して着たいです(笑)。

East Pacific Trade スニーカー

F:5点目はシューズですね。

大平:「イーストパシフィックトレード(East Pacific Trade)」という韓国発のスニーカーブランドで、小木“Poggy”基史さんのプロデュースのもと「エムエーエスユー(M A S U)」とコラボレーションした一足です。企画させていただいた文化服装学院の講義で、エムエーエスユーのデザイナーの後藤愼平さんにゲスト講師としてご登壇いただいた時に、後藤さんがご自身で履いてらっしゃったんです。シャツにジャケットにネクタイ、ボトムはデニム、そして足元はこのギラッとしたスケシューというスタイルが格好よくて。そのスタイル真似したい!と思い、ポップアップのレセプションで買いました。

F:カラー展開は何色あったんですか?

大平:3色です。会場ではPoggyさんがネイビーを履いてらっしゃってそれと悩んだんですが、「シューレースの色とアッパーの色が同じなのはグレーだけだから合わせやすいと思う」ってPoggyさんから直々にアドバイスを頂き、その通りにグレーを買いました(笑)。

F:一番刺さったのはどの部分だったんでしょうか?

大平:ラメ+スケシューのようなぽってりとしたフォルムですね。ワイドパンツにも合うし、スラックスのようなストレートなシルエットに合わせた時にもしっくり来る。ポップというよりもドレスシューズっぽい感じが結構気に入ってて出番が多かった理由でもあります。

F:確かにそのバランスはとても良いです。

大平:今日のようなスラックスに合わせることが多いです。ドレスシューズっぽいスニーカーって、エレガントだけど革靴とかとはまた違う気分で楽しめるので好きですね。

PHOEBE PHILO?トップス

F:最後は大物、「フィービー ファイロ(PHOEBE PHILO)」!

大平:10月にドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA、以下ドーバー)で立ち上がった時に日本でいち早く見られる機会だったのでワクワクしながら見に行きました。フィービー?ファイロ(Phoebe Philo)さんはセリーヌでデザインをしていた時から大好きでモードファッションを気になり出した時からも大きな存在でした。本当にみんなフィービー?ファイロが作ったバッグ持って、コート着て、シャツを着てって感じで同じ格好だった時があったんですよ。実際に私もその時に買ったものは今でも愛用していて、今日着てきたコートもフィービー時代のセリーヌです。

F:セリーヌ期と今での違いはどういうところだと思いますか?

大平:ドーバーで見た時に「やっぱりこういう生地好きなんだな」とか「こういうディテールとかテクニックは前にもやっていたな」という以前から好きだった部分を改めて感じることができたのですが、その一方で見たことがない形も結構あったんですよね。例えば、フィービーは結構ウエスト周りを締めるようなピースが多くて、そういったデザインを入れると可動域は狭くなるけどボディラインはすごく美しく出るみたいな。ただ、このトップスのような形は見たことがなかったんですよ。あとは、タイダイ染めみたいなアイテムもあって「これがフィービーなの?」と驚いたりもして。根本的に表現されたいバランスやスタイルは変わらないところには嬉しさを感じつつ、アップデートもたくさん楽しめました。

F:今後も継続して買っていく予定ですか?

大平:買いたいですがめっちゃ高いんですよ。コートとか靴とか小物類も可愛くて欲しいものはいっぱいありましたが厳選してこれにしました。もしスポンサーがいたら「ここからここまで!」ってやりたかったです(笑)。

F:伊勢丹新宿も盛況だったようで、ファンの多さを再認識できるようなカムバックでしたね。

大平:新しい気分になれる服だなって思いましたね。店頭でラインナップを見てエレガンス回帰を感じられるようなものがたくさんあったんですよ。纏うだけで完全にそのムードにスイッチが切り替わるようなデザインが多くてデザイナーとしての腕の良さというよりも、人の纏う空気を一変するようなマジックを持っているんですよね。私自身、デザイナーズのブランドが好きで彼らの手掛けたものを選ぶ理由は、着飾るというよりもそのクリエイションを着させていただくという感覚に近いんですよね。そういう観点でもこの服は自分にすごく変化を持たせてくれるんです。掛かっているだけだと「そうかな?」って感じじゃないですか。でも着てみると「ちょっとムードを変えてみようかな」とか「新しい自分に挑戦してみようかな」って気持ちになれる。そんなとても良い買い物ができたなと思います。

今年を振り返って

F:今年はどんな1年になりましたか?

大平:全体的にトレンドの大きな変化を感じる1年でしたね。シェミナ?カマリ(Chemena Kamali)の「クロエ(Chloé)」以降って感じだと思うのですが、長く持ちたいものを買いたいという気分になってきていて5年後、10年後も使いたいなと思うものを探す旅のような感覚がありました。

F:スタンダードになるもの?

大平:私はスタンダードにはあまりフォーカスを当ててないんですよね。スタイルとしてのスタンダードというよりも自分の中でのスタンダードになり得るものを探すのがすごく面白くなった1年だなと思いました。

F:世の中の風潮としてはスタンダードは引き続き愛されている印象がありますよね。

大平:そうですね、それも愛されるべきものだとは思うのですが、やはり私はファッションの世界にいるので、日々自分も新しくしていきたいし、世界の変化についても敏感に反応していきたい。昨日の自分よりも今日の自分の方が楽しくありたいし、素敵でありたいし、美しくありたいって思っているので、そうするとやはり変化は必要なんです。例えばそこでスタンダードを選んでしまうと、現状維持が続くような感覚になるのでそういう意味でも自分の思想とはあまり違うかなと思います。ただ一方で、日々変化していく気分に対してそのために逐一何かを買っていくというよりも、今学びを深めているセンスや教養をもとに選んだ上で一緒に育んでいきたいという気分です。

F:今年の流れを受けて、来年はどのような変化があると思いますか?

大平:今年はとにかくインバウンドが増えましたよね。旅行者の方もそうですし、セレブリティや文化人も日本を訪れていて、その中で日本の魅力が再発見されて私自身も改めて日本の強さを感じることができましたね。だからこそ、角田さんとVERDYさんの企画は本当に素敵だなと思いました。日本の方にもこんなに世界で知られている日本人がいるんだと発見されるきっかけになったと思うので。また、シリ シリやサガン?ヴィエンナの日本の美意識が反映されつつも海外で好まれているというものもすごくスペシャルピースで魅力的だなと感じているので、例えば海外で「かりんの着ている服、面白いね」って言われた時に「これは日本のもので、こんな魅力があるんだよ」って言えるようなものを増やしていきたいし、発信していきたいと思っています。

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