菅原美裕が手掛けるジュエリーブランド「ロロ(LORO)」が、設立10年を前に新たなフェーズへと向かっている。売上に捉われずにクリエイティブやブランディングの強化を重視し、パリを拠点としたジュエリーの大手見本市「ヌーベルボックス(NouvelleBox)」に出展。ファッションブランドのランウェイでコラボジュエリーを発表するなど、世界観の訴求に努める。
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菅原は2016年にロロをオンライン直販からスタート。シンプルで手に取りやすいデザインは、世代や性別を問わず徐々に広まり、デザイナーズジュエリーの先駆けとなった。また、並行して展開している「イチイチイチナナ(1117)」は18金やプラチナのオーダー制のジュエリーを中心とし、婚約指輪などを取り扱う。2020年には2ブランド合同の直営店を青山にオープンし、2024年に2号店となる大阪店を出店。いずれの店舗も、デザインを「ケースリアル(CASE-REAL)」の二俣公一が手掛け、静謐でありながら温かみのある空間を演出し、「長く愛用するためのものを、心ゆくまで選べる」ストアを目指した。
ロロではここ数年、ユニセックスサイズの導入や天然石シリーズ、18Kやプラチナ、ダイヤモンドなどハイエンドなマテリアルのシリーズを展開するなど、ラインナップを強化してきた。
これは、近年インフルエンサーやSNSを起点としたジュエリーブランドが急増する中で、ロロのブランド像を模索した結果だという。「ロロではデザインや素材選びにこだわり、自分が納得するものを作ってきました。誰でもデザイナーやディレクターと言える世の中ですが、“SNSブランド”にはなりたくないですし、そことどう差別化できるか悩みました」(菅原)。彫金学校でマテリアルへの理解を深め、デザインに取り組む菅原だからこそのオリジナリティは、2フィンガーのリングや、数珠からインスピレーションを得たsphere(球体)モチーフのアイテムなどのシグネチャーを生み出し、確かなファンを獲得している。
直営店と自社オンラインを基軸とした“目が行き届く”運営を続けてきたロロは、短期的な売上ではなく、長期的なブランド価値の向上へと目を向ける。「点数を増やすのは、人を増やせば簡単ですが、自ずと売上が必要になる。ただ、そこを重視してしまうと、根本的にブランドを育てる意識が分散して本末転倒になってしまう」。ジレンマはあるが、一つずつクリエイションの強度をあげ、意味のある取り組みを続けるというのが菅原の決断だ。
海外市場は、現地ではなく直営店に訪れる台湾や中国、韓国のインバウンド客を通じて可能性を感じていたという。「ファッションやジュエリーへの審美眼が高く、市場が活発なヨーロッパでの反応を見て、ブランドとしてどうもがけるか、挑戦したみたいと思ったんです」と大手見本市ヌーベルボックスへの参加を決めた。
イベントへの参加を踏まえ、子どものおもちゃ箱を想起させるテディベアや犬のモチーフを取り入れた遊び心のある新作コレクション「MY DAUGHTER’S TOY BOX」を制作。シルバー製のリングホルダー(ジュエリーボックス)をスペシャルピースとして展開したほか、目にオニキスを埋め込んだテディベアのキーホルダーなども登場した。
9月のパリファッションウィーク中に行われたヌーベルボックスのイベントでは、現地バイヤーから良いフィードバックを得たという。「直近で、すぐにビジネスにつながるわけではありませんが、本場の声を聞いて、ブランドのあるべき姿が見えてきました」と手応えを語る。
また、デザイン性を追求するブランドとして、兼ねてから進行があった中国出身デザイナーによるニューヨーク拠点のファッションブランド「ルオハン(RUOHAN)」のランウェイでジュエリーを提供。
海外展開については「手探り」としつつ、直営店で反響がいい中華圏のお客向けに上海でのポップアップ開催を検討中だ。国内に関しても、引き続き販売体制やタッチポイントについては模索していく。「単なるアクセサリーではなく、記憶に残るジュエリーを届けたい。クリエイション面でも自分たちのアイデンティティを追求しながら、それが伝えられる方法で販売したいと考えています」。また、「新しいことや、ブランドの体制を少しずつ調整しているタームですが、計画的に何かを達成していくのではなく、地味にチャレンジを続けていく期間だと思っています」とじっくりとブランドを育てる姿勢を示した。
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Image by: FASHIONSNAP










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