
Image by: FASHIONSNAP

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アンドエスティHD(旧アダストリア)は、2025年4月に伊藤忠商事と共同で英国発祥のアウトドアブランド「カリマー(KARRIMOR)」の商標権を取得し、カリマーインターナショナルを連結子会社化した。これまで数々のアパレルブランドを展開してきたアンドエスティHDにとって、本格的なアウトドアブランドの運営は初の試みとなる。新体制となって半年、同社はカリマーをどのように成長させようとしているのか。そして、新たにアメリカ?シアトル発のボトルブランド「ミアー(MiiR)」の販売代理店となった狙いとは。カリマーインターナショナル 栄木雅人社長に、その戦略とヴィジョンを聞いた。
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カリマーとミアー、パートナーシップのシナジーとは
アンドエスティHDがカリマーを手掛けるに至った背景には、同社がこれまで手薄だったマーケットへの挑戦の意味合いがある。これまで、アンドエスティHDで「フォーエバー 21(FOREVER 21)」などを手掛けてきたカリマーインターナショナルの栄木社長は、アンドエスティHDが今までノータッチだった領域として「アウトドア?スポーツ」を挙げる。「シティクリーク(CITY CREEK)」のようなキャンプグッズを扱うブランドは存在するものの、本格的なアウトドアギアやウェアを手掛けるブランドはなかった。そこで同社が選んだのが、歴史がある海外ブランドを取得し、育てていくという戦略だ。この戦略の実現において、重要なパートナーとなったのが伊藤忠商事だ。アンドエスティHDの木村治社長と、「フォーエバー 21(FOREVER 21)」の日本再上陸で協業した実績がある伊藤忠商事との間で、ブランドビジネスに関する情報交換が常日頃から行われていたという。その結果生まれたのが、商標権を共同で持ち合うというビジネスモデルだった。両社の強みを活かした枠組みが整ったタイミングで、カリマーの株式売却の話が舞い込んできた。

その結果、2025年4月にスタートしたカリマーインターナショナルは、カリマーを中核としつつ、スポーツ?アウトドア領域で確立したブランドを今後増やしていく方針を掲げている。その第一弾として発表されたのが、ミアーの国内販売代理店契約権の取得だ。2026年1月から、カリマーインターナショナルが新たなパートナーとして、日本でのミアーの展開を担う。
なぜ、ボトルブランドであるミアーの契約権を取得したのか。栄木社長は、「ボトルはバックパックの横に挿して入れるので、カリマーの主力製品であるバックパックと親和性が高い」と、狙いを語る。

海外ブランドが日本に進出する場合、代理店が国内での展開を受け持つビジネスモデルが多いが、「そのモデルだと0を1にすることはできますが、1を10にすることは難しい」と栄木社長は指摘する。ここに、アンドエスティHDが持つ強みが活かされる。「アンドエスティHDには卸売りのノウハウはありません。しかし、小売のノウハウがあることに加え、『アンドエスティ』というECプラットフォームを持っている。そこに海外ブランドは期待してくれています」(栄木社長)。
この期待感が、ミアー側が新たなパートナーとしてアンドエスティHD(カリマーインターナショナル)を選んだ決め手となった。背景には、海外ブランド側のリクエストの変化がある。従来は卸売を担う代理店を探すのが一般的だったが、近年は卸から先の小売展開まで一貫して手掛けることができるパートナーを求める声が強まっているという。ブランドを大きく成長させるためには小売展開が不可欠であり、そのノウハウを持つ企業への注目度が高まっているのだ。日本国内でブランドを大きく育てたいという海外ブランドのニーズの高まりから、「アンドエスティHDが魅力的だと感じていただけているのでは」と、栄木社長は手応えを語る。

カリマーインターナショナルは、今後も年に1ブランドを目安に海外ブランドを増やしていく計画だ。すでに5、6件のブランドからオファーが来ているという。ただし、無闇にブランドを増やすわけではない。同じカテゴリーのブランドを増やすとカニバリゼーションが起こるので、カリマーが得意とするアウトドアウェアやバッグのブランドをこれ以上増やすつもりはなく、カテゴリーが異なるブランドを拡張していく考えだ。

環境問題は「本気で取り組まなければならないフェーズ」
カリマーインターナショナルがミアーをパートナーに選んだ理由は、ビジネス上のシナジーだけではない。ブランドが持つ哲学や価値観への共感が根底にある。ミアーは、コーヒーカルチャーが根付くシアトルで生まれたブランドだ。その洗練されたクリーンなデザインは、コーヒーショップの別注アイテムとしても人気が高い。コーヒーショップはアメリカだけでなく日本でも街のカルチャーの発信基地としての存在感を増していると、栄木社長は語る。
さらに大きな意味を持つのが、ブランドの高い志だ。ミアーは創業以来、環境保護や発展途上国への支援プロジェクトに積極的に取り組み、社会や環境に対するパフォーマンスや透明性などが評価されるBコープ認証も取得している。創業者のブライアン?パペ(Bryan Papé)氏が、スキー中の事故で生死の境をさまよった経験から、「もし生き延びるなら世界のためになることをしよう」と決意し、環境に配慮したボトル作りを始めたというストーリーを持っており、「地球に対する取り組みを、綺麗事ではなく本気やっている」と栄木社長は言う。その真摯な姿勢は、同じく環境問題に高い意識を持つアウトドアブランド「パタゴニア(Patagonia)」にも評価され、同ブランドのショップでミアーのボトルは販売されている。この哲学は、カリマーが大切にしてきた価値観とも共鳴する。「カリマーは山で育てていただいたブランド。環境問題に対するアプローチは、本気で取り組まなければならないフェーズに入っていることを感じています」と、栄木社長は語る。

カリマーが提供するべき「価値」とは
新生カリマーは、具体的な商品戦略においても大きな変革を進めている。そのひとつが、これまで設けられていた本格アウトドアラインの「ネイチャースタイル」と、デイリーユース向けの「ライフスタイルライン」という区分けの撤廃だ。栄木社長は「玄関を開けて家の外に出れば、そこはもうアウトドア。僕自身もそうですが、普段着とアウトドアウェアを分けて考えることはしていないんです」と言う。目指すのは、顧客がドアを開けてから目的地であるフィールドまでを「継ぎ目なく」つなぐ製品だ。ただし、単なるカジュアルウェアとして消費されるブランドを目指すわけではない。「芯にあるのは、登山。そこに、日常的なデザインや、使い勝手の良さをプラスするイメージです」(栄木社長)。

「売り上げを拡大することは企業として当たり前」という前提はあるものの、栄木社長はアンドエスティHDの木村社長から常々「価値のあるビジネスを行い、価値のあるブランドを育てなさい」と言われているという。カリマーというブランドが提供する価値とは何か。それは「山で自然に触れながらアウトドアを楽しんでもらうこと」だと栄木社長は定義する。そして、その体験を通じて、人々が環境について考える機会を増やすことこそが、ブランドの役割だと考えている。ミアーが製品を通じて社会貢献を具現化しているように、カリマーもまた、アウトドア体験を通じて人々の意識に働きかける。アンドエスティHDが、カリマーとミアーを今後どのような「価値」を持つブランドに育てていくか。引き続き、注視していきたい。

カリマーインターナショナル 栄木雅人社長
1980年神戸市生まれ。関西学院大学社会学部、エスモードインターナショナルパリ校卒。ファッション企画会社、ファッション系ITベンチャーを経て、フリーランスとして活動した後、FASHIONSNAPに参加。ファッションを歴史、文化、経済、世界情勢などの視点から分析し、知的好奇心を刺激する記事を執筆することが目標。3児の父。
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