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世界有数の調香師で、“フレグランスのレジェンド”と呼ばれる、アルベルト?モリヤス(Alberto Morillas)氏。これまで300近いフレグランスを手がけ、2013年には米フレグランス財団から生涯功労賞(Lifetime Achievement Perfumer)を授与された最初の調香師だ。「グッチ(GUCCI)」では、「グッチ ブルーム」や「ザ アルケミスト ガーデン」と言った人気をけん引する香りを生み出し、確固たる基盤を築いた功労者と言える。錬金術という際立ったコンセプトをどのように香りに落とし込んだのか──。長年尽きないインスピレーションや、“フレグランスのレジェンド”がこれから挑戦したいこととは一体何なのか?
フレグランス愛好家でなくとも、「アルマーニ ビューティ(ARMANI beauty)」の「アクア ディ ジオ」や「キリアン パリ(KILIAN PARIS)」の「グッド ガール ゴーン バッド」を調香したと聞けば、モリヤス氏の“伝説”はすぐに理解できるはずだ。この2つ以外にも、今なお語り継がれる名香は数知れず。ある意味、”フレグランスの古典”とも言えるが、それでいて現代の“ヒット作”を創造し、話題が尽きない。
■アルベルト?モリヤス:スペイン?セビリア生まれ。1970年にフィルメニッヒ社に入社。ザ アルケミスト ガーデンでは、「ティアーズ フロム ザ ムーン」と「ウェア マイ ハート ビーツ」など、「風」カテゴリーを代表する2つのフレグランスを制作。1998年から同社のマスターパフューマーを務める。2013年、長年の功績を讃え米国フレグランス財団(FRAGRANCE FOUNDATION)から生涯功労賞(Lifetime Achievement Perfumer)を授与された最初の調香師となった。
自由が叶えた“香りの錬金” 「ザ アルケミスト ガーデン」の誕生
メゾンが持つ古典的な美学、創造に対する情熱、素材に対するフェティッシュと呼応するかのように、2019年にラグジュアリーフレグランスコレクションとして誕生したのが「ザ アルケミスト ガーデン」だ。グッチ誕生の地であるフィレンツェで栄えた錬金術(アルケミー)に着想し、卑金属から貴金属へと精錬するように調香された香りが揃う。コンセプチュアルなこのコレクションを、モリヤス氏は数多の香料を厳選しながら創造性をもって昇華している。
ザ アルケミスト ガーデンの最大の魅力は、創造における自由にあります。これは現代の調香の世界では非常に稀な機会です。このコレクションを作るとき、私はグッチからは驚くほどの自由を与えられ、まるで香りで詩を書くような感覚でした。“完璧な錬金(調香)”のため、物語の一語一語を構成するように、素材をひとつずつ、ていねいに選ぶ自由がありました。

「Earth(土)」、「Air(風)」、「Water(水)」、「Fire(火)」という錬金術における各元素の4つの段階に着想したプロセスを通じて、美しい調和を奏でるフレグランスが生まれた。
ひとりの調香師が、香りを“パレット”のように組み合わせられるコレクション全体を構築できることは、そう多くはありません。このコレクションの各フレグランスは、ローズ、ウード、アイリス、ネロリなど、ひとつの“主役ノート”を中心に構成されており、素材本来の魅力を純粋に表現することができました。















ザ ボイス オブ ザ スネーク(50mL 3万4650円)
ザ アルケミスト ガーデンは、15種の香りに加え、フレグランスオイルやフローラルウォーターを展開。使う人の感性で自由に重ね付けしたり、オイルやフローラルウォーターだ毛をまとうなど、自分だけの香りを錬金するように楽しむことができる。モリヤスが手がけた「ティアーズ フロム ザ ムーン」は、日本で特に人気が高い香りのひとつ。やさしく軽やかなフローラル フレグランスで、このコレクションのベストセラーだ。

ティアーズ フロム ザ ムーン オードパルファム

ティアーズ フロム ザ ムーンは、シンボルとして選んだトンボに深くインスピレーションを受けています。自由、希望、知恵、変化を象徴するトンボは、この香りに軽やかで晴れやかなスピリットを吹き込んでいます。その空気感、軽やかさ、そして光をまとうような印象を香りで表現したいと思い、みずみずしいホワイトフローラルのブーケを中心に構成しました。
モリヤス氏は、香りの印象を詩的なムードで作り上げた。豊かさと気品の象徴としてのダマスク ローズ、朝露に濡れたグリーンノートで、ほんのりとアニマリックなムードを漂わせるスズラン、ブーケに明るさとエレガンスを添えるムスクのヴェール。アンティークの薬瓶のようなボトルに黄金比で詰め込まれたこれらのエレメントは、香りのミストによってまたたく間に肌をなでるように広がる。
香り作りの面でも自由を与えられ、思い入れのあるコレクションは、モリヤス氏にとってすべて異なるストーリーを持ち、お気に入りは決め難いという。
正直に言えば、ひとつだけを選ぶことはできません。それぞれの香りがひとつの物語であり、独自の世界を持っているからです。気分によって惹かれる香りは変わります。どのフレグランスも、個人的な記憶や感情と結びついており、そのつながりは、その時々の心の状態によって進化していくのです。
時代を超える香りの秘訣と“アプローチの差異”について
数多くの、いつの時代も愛されるフレグランスを生み出してきたモリヤス氏だが、アイデアが尽きる心配はないという。
私にとってのインスピレーションは、何よりも自然です。そして、自然はどこにでもあり、永遠に存在するもの。だから、インスピレーションが尽きることは決してありません。
ザ アルケミスト ガーデンでも花や植物のエレメントがインスピレーションとなりながら、意外性のある香りで驚かせてくれた。ともすると“ありきたり”なヒントから、美しく、複雑で、ユニークな香りはどのように生まれるのか。
花の香りを嗅いだ瞬間、それを“コピーする”のではなく、“その花が私に与える感情”を香りで表現したくなるのです。私はひとつの素材を核に、優雅で明瞭な香りを構築するのが好きです。
グッチにおいては、ブランドのストーリーや象徴、アルケミー(錬金術)や神話、夢といったテーマからも大きなインスピレーションを受けています。
ジュネーヴの自宅の庭園では、さまざまな植物、花々を愛でている
こうした私的な感受性が、数々の香りの奥底に眠る、“人間的な美しさ”の秘密のように思う。天然香料にしても、合成香料にしても、人肌にふれたとき、まとう人の琴線に触れる香りへと昇華するには、どこかにそうした立体的な感性が必要なのだと気付かされた。そして、常にモダンで、尚且つ時代を超えても愛される香りを生み出し続ける秘訣についても問いかけてみた。
技術的な知識と、感情への鋭い感性の両立です。長年かけて素材や構成のバランスに熟達してきましたが、同時に“直感”も大切にしています。記憶や感覚、たったひとつの言葉が、新しい何かを生み出すきっかけになることもあるのです。そして常に「身にまとう人が心地よく感じる香り」であることを忘れません。香りは、着る人の気分を高めるものであるべきです。
モリヤス氏の香りを語るとき、ミステリアスでありながら親しみやすさもある。そんな声を聞くことが多い。どの香りもコンセプトやストーリーが際立つが、一度まとってみると、そのウェアラブルな魅力が体感できるはず。この“企業秘密”のヒントを明かしてくれた。
私の香り作りは、まず鮮やかな創造の核となるコンセプトから始まります。例えば、トンボやタカなど、象徴的な存在を起点に、そこに誰もが親しみやすいフローラルやウッディな要素を重ねていきます。
少しだけ“予想外”の素材やアコードを加えつつも、どこかに安心感のある要素を組み合わせることで、香りが芸術的でありながらも、身近に感じられるようにしています。
トップクリエイターとして、“世界で最も多くのフレグランスを生み出した調香師”に挙げられる彼は、名だたるメゾンブランドの看板となるフレグランスを生み出す一方で、ニッチフレグランスともさまざまなコラボを続けている。クリエイティブのプロセスにはどんな違いがあるのか、素朴な疑問をぶつけてみた。
グッチのようなファッションブランドと取り組む際は、強いヴィジュアルアイデンティティや文化的背景が存在します。創作のプロセスは、デザイナーの美学やライフスタイル、ミューズを表現するような、物語性のある広いアプローチになります。
一方、ニッチブランドの場合は、より実験的で素材に焦点を当てた香りの表現が求められることが多い。どちらの場合も、ブランドのDNAを尊重しながら、自分自身のアーティストとしての視点を融合させることが私の挑戦です。
1999年には自身のブランドとして「ミゼンジール」を立ち上げた
“フレグランスのレジェンド”がこれから挑戦したいこと
近年、長年フレグランス業界に携わってきた人たちが口を揃えて「まったく想像していなかった」と言うほど、市場が急速に盛り上がっている。メゾンからニッチまで、さまざまなブランドがひしめき合い、香りのトレンドも鮮やかに移ろう状況だ。技術的かつ感情的な香りを貫いてきたモリヤス氏はこの変化に気になることはないのだろうか。
成長は多くの可能性をもたらしますが、同時に“過剰な量産”や“型通りの作品”が増えるリスクもあります。私が最も懸念するのは、感情のこもっていない、ただのトレンドやフォーミュラに従った香りが増えることです。
香りは本来、物語や感情を伝えるものであり、単なる“消費される商品”ではありません。ザ アルケミスト ガーデンのようなコレクションは、フレグランスが“クラフト(職人技)”であり、“体験”であることを私たちに思い出させてくれます。
300近い作品を生み出しながらも、なお精力的にフレグランス作りに励む“フレグランスのレジェンド”は、未来をどう見据えるのか。最後に、これから挑戦したいことを聞いてみると、今までのキャリアを感じさせないほどに意欲的なコメントが返ってきた。これからも、美しいモリヤス作品に触れる機会に胸を躍らせて待ちたいと思う。
大切なのは“進化し続けること”です。今もなお、未知の素材に挑戦し、古典的な構造を最新技術で再解釈し、他のアーティストやデザイナーとの協業にも取り組んでいます。
人生においては、“創造”と“内省”、“公の祝祭”と“私的な静けさ”のバランスを大切にしたい。私は今も学び続けており、それこそが最高の挑戦だと感じています。
(編集:平原麻菜実)
最終更新日:
■グッチ:公式サイト
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