ポールダンサーの小源寺亮太
Image by: FASHIONSNAP
「BODY MAGIC」は身体表現のプロフェッショナルに、「身体と装い」について語ってもらう連載企画。今回登場してくれたのは、ポールダンサーの小源寺亮太だ。2020年に世界チャンピオンとなり、日本大会では男子シングル初の二連覇を達成。数々のミュージックビデオに出演するほか、モデル、タレント、トレーナーなど多岐にわたって活躍し、近年はコンテストの審査員も務める。業界を牽引するパフォーマーが見つめる身体、そして衣装の魅力とは?
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小源寺亮太がオーナーを務める南青山のスタジオは、まるで都会のオアシスだ。あらゆるところに植物が置かれ、パウダールームの中でも鳥や虫の鳴き声が流れている。ここには老若男女の生徒が通っており、最高齢は70代だという。ポールダンスに対する”官能的な女性たちのショーダンス”というステレオタイプに囚われていると、あらゆる意味で裏切られる。
小源寺の言葉や身のこなしからは、ポールダンス界を牽引するパフォーマーならではの美意識とプロ意識が伝わってくる。「ストイックなわけではなく、ただ変態的にオタク気質なんですよ(笑)」と本人は謙遜するが、鍛え上げられた身体はギリシャ彫刻のよう。どの瞬間、どのポーズを切り取っても美しい。
「男性がやってもいいんだ」という衝撃
ステージで見せる神話のような世界観とダイナミックな技術。その超絶技巧からは想像できないが「昔から運動が嫌い」と本人は明かす。「球技とかも全然ダメで『体育の授業があるから早退します』というような子どもだったんです(笑)ただ身体測定とか、自分の記録を伸ばすのは好きだったんですよね」。
歌手を目指し、17歳で福岡から上京。ダンスを本格的に始めたのはその頃だ。「自分に何が合うのか分からなくて、様々なダンスレッスンを受けていました。ある時、クラブイベントで偶然出会ったのがポールダンス。男性ダンサーの演技を見て『男性がやっていいものなんだ!』と衝撃を受けて。その方が楽屋に戻るところを引き止めて『僕もやりたいです。どこに行ったらできますか?』って聞いたのがきっかけです」。
それから11年。「スポーツジムで身体を鍛えるのは苦手だけど、ポールダンスはやっていくうちに筋肉も育っていく。レッスン毎にできることが増えていって『自分でもこんなことができるんだ!』という感動の積み重ねが自信をもたらしてくれたんですよね」。
オリンピック種目になるかもしれない
ポールダンスは、スポーツともアートとも言われている。「僕は表現する方が好きなのでそういう大会に出場しているんですけど、"ポールスポーツ"としてオリンピックの種目入りを目指している団体もあって。それはポールをもっと認知してもらうためにはいい活動だと思っています。2028年ロサンゼルス五輪には——という噂も耳にしているので近い将来、実現するかもしれないですね」。
日本での選手人口も徐々に増え、競技としてどんどん広がりを見せている。「国によってトリックそのものや表現方法が違うから、見ていて面白いですよ。今はSNSで情報を共有できるから、ますます技術が進化しています。もともとバレエや体操をやっていた方たちが参入してくると、ものすごい動きが生まれるんですよね」。
世界一になるために必要だったもの
小源寺が出場する試合では身体表現だけではなく、曲に対しての動き、衣装やメイクを含め、いかにトータルの世界観を作り上げられるかが評価される。パワー系のトリックや、柔軟性を見せる動き、フロアでのパフォーマンス、会場がどれだけ魅了されたかという”エックスファクター”も採点対象になるという。
彼の独特の世界観を一言で表すならば「ファンタジー」。小源寺の妖精のようなキャラクターとパフォーマンスは、ステージ上に束の間の"異世界"を作り上げる。「正直なところ、始めた頃はやっぱり『優勝したい』という願望が強くて空振りしていたところがありました。でも挑戦する過程で、自分の身体や魂をもっと進化させていきたいという気持ちに変わっていって。『結果がどうこうではなく、色々な経験をしにいく』という意識に変わったタイミングで、賞をいただけたという感じです」。
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