「クロエ(Chloé)」が、2023年春夏コレクションをパリで発表した。クリエイティブディレクターのガブリエラ?ハースト(Gabriela Hearst)は、地球上の気候変動問題を解決へと導く「Fusion Energy(核融合エネルギー)」を希望の光と捉え、コレクションに反映したという。
「Fusion Energy」とは?
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核融合は、2つの原子同士がぶつかり合い1つの原子ができた時に生じるエネルギー反応。「地上に太陽をつくる」研究とも言われ、長い時間にわたって膨大なエネルギーを生み出し続ける太陽で起きている現象を人類の手で生み出し、発電等に使用することを目指す研究。資源となる水素が海水中に豊富にあり、二酸化炭素を排出しないといった特徴があり、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決するものと期待されている分野。軍事用技術と原理が異なるため、安全保障上の制約が少ないという特徴もある。(文部科学省HPなどより)
ガブリエラはコレクションションノートの冒頭で、核融合について「この宇宙を動かしているエネルギーは、それほど遠くない将来、世界に電力を供給するのを助け、今抱えている不安の多くを解決してくれるでしょう」と記している。エネルギー消費の約84%を占める化石燃料に変わり核融合が持続可能なエネルギー源の一つになることへ期待を込めた。
クロエは、2023年スプリングコレクションからこのテーマを掲げている。ガブリエラはエンジニアや科学者とのやりとりを重ね、日本を含む35ヶ国が参加している平和目的のための国際共同プロジェクト「ITER(イーター)」をはじめとする研究機関を訪問するなどし、新作コレクションのコンセプトを深めていった。
いつもと違う趣の会場
ショー会場はこれまで、夜の石畳やセーヌ川沿い、ガラス張りの開放感のある建物など、いずれも自然が感じる場所だったが、今回はムードが一変。自然光を遮断した暗い会場では、ヴィジュアルアーティストのパオロ?モンティエルコッパ(Paolo Montiel-Coppa)とのコラボレーションによる近未来的な空間が作られていた。天井から吊るされた輪は発熱しているかのように赤く光り、青い光線がフロアに張り巡らされる中、ショーがスタート。
「核融合」をファッションで表現
コレクションは、ウエストのサイドにカットアウトが施されたカシミヤシルクのニットタンクドレス、肌が透けて見えるほど薄いカシミアのメッシュニットをテーラードジャケットと合わせたルック、穴の空いた繊細なメタリックシルバーのドレス、縁をカラーレザーでパイピングしたアウターなどで構成。バイカージャケットからインスパイアされたレザージャケットは太紐でショルダーとアーム部分にホイップステッチを施し、ハード過ぎないスポーティなタッチに仕上げている。
デニムは「Adriano Goldschmied」 と開発し、リサイクルコットン87%、ヘンプ13%で作られており、レザーウォッシュ加工により発生する水の使用量を削減。ホワイトのデニムはクロエのために開発された特別な素材で、漂白の過程を省くことで環境に配慮した製造プロセスとなっている。
今回のコレクションで、核融合に必要なトカマク原子炉(磁場閉じ込め核融合を起こすのに用いられる装置、丸いコイルのような形)がキーモチーフとなっており、その表現としてアイレットを多用。スリットの編み上げに施したほか、円を描くスタッズの装飾としても使用された。シルエットやディテールにも影響しており、袖が丸みを帯びていたり、クロシェドレスのパネルもラウンド型。
ガブリエラの素材へのこだわり
バッグではコインクロージャのシグネチャーが特徴の「ペネロペ(Penelope)」から、不規則なフォルムのデイバッグがグレインレザーやリネン、ラフィア、ニット素材でバリエーション豊富に展開。シューズは厚みのあるプラットフォームスニーカーで、エッジはオーバーロックステッチが施されガブリエラ特有のクラフト感を感じさせる。シューレースがランダムにクロスされたアッパーに、アンクルストラップが取り付けられたサンダルなど、実用的なラインナップが揃った。
コレクションで使用したリネン、シルク、ウール、レザーはトレーサブルで、レザーは調達からタンニングまでフランス産のほか、オーガニックウールはウルグアイにあるガブリエラの家族が経営する農場から入手。環境負荷の低減や生産背景の透明化など、ファッション産業によるさまざまな地球へのインパクトにおける解決策を、ファッション通じて提案しているガブリエラ?ハースト。核融合という壮大な科学現象をテーマに、彼女が作り上げるクロエを前進させようとしている。
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