ポンヌフ橋でキス オード パルファン
Image by: コンダンセ パリ
フレグランスの魅力とは、単に“匂い”だけじゃない。どんな思いがどのような香料やボトルに託されているのか…そんな奥深さを解き明かすフレグランス連載。
第5回は、初のフレグランスコレクションを発売したスキンケアブランド「コンダンセ パリ(CONDENS? PARIS)」をピックアップ。
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植物本来の力を凝縮(コンダンセ)し、確実な肌効果をエビデンスとともに追求するナチュラルスキンケアブランド「コンダンセ パリ」から、初のフレグランスコレクション全7種が2022年に誕生。日本には2023年7月に4種、そして10月17日に3種が上陸した。
「スキンケアブランドのフレグランス?」といぶかる人もいるかもしれないが、創業者ナタリー?ラモンデ(Nathalie Lamondé)のプロフィールを知れば、むしろ「ついに!」と思えてくる。
「実は私の最初の職場は、由緒ある香水瓶製造会社だったの」とナタリー。「当時フランスには香水瓶を製造する工房が16ほど残っていて、そのうち最も有名な工房のNY支社に就職し、2年後にパリに戻ってきた。『シャネル(CHANEL)』や『ジャン?パトゥ(JEAN PATOU)』、『ミュグレー(MUGLER)』といった名香のフレグランスボトルを手がけていた工房よ」
その後LVMH モエ?ヘネシー?ルイ?ヴィトンに移り、「ケンゾー(KENZO)」のフレグランスとスキンケアラインをマネジメントすることになるのだが、なかでも大ヒットフレグランス「フラワー バイ ケンゾー」ではボトルデザイナーのセルジュ?マンソー(Serge Mansau)と調香師アルベルト?モリヤス(Alberto Morillas)というふたりの巨匠を迎え、大いに影響を受けたという。
「フレグランスは私にとってまさに“初恋”。いつの日かこのミステリアスで魅惑的な香りの世界に戻りたいと思っていたの」
創業10周年を機に誕生したフレグランスだが、ナタリーとしては「ブランドの世界観をエモーショナルでコンセプチュアルな方向に押し広げ、カスタマーにはもっと想像力をもってブランドに接してほしい」という思いがあった。
そこで生粋のパリジェンヌであるナタリーは、ステレオタイプではなく本物のパリのよさを香りで伝えたい、しかも単品ではなくコレクションとして提示することを決意。調香師にはケンゾー時代からの盟友マリー?デュシューヌを起用、さらにフランスを代表する俳優ソフィー?マルソー(Sophie Marceau)も加わり、約18ヶ月にわたる三人四脚でのクリエイションが始まったのだ。
7種から成るフレグランスコレクションはいずれも、ふたりの生粋のパリジェンヌが選び抜いた場所を、その歴史やそこにまつわるストーリーも含めて香りで描いているところが魅力だ。
「私は幼いころ、父に連れられてよくパリを散策していたんだけれど、ドフィーヌ広場はまさにそんな場所のひとつ。シテ島にあるパリ最古の広場で、当時の国王アンリ4世が王太子のために作ったもの。宮殿とポン?ヌフ橋に囲まれるように位置し、当時の面影がまだ残る静かな小広場よ。だから『ドフィーヌ広場でそぞろ歩き』は梁に使われる木の軽い香りを主役にしつつ、そばを流れるセーヌ川のフレッシュさを加えているの」
?「ソフィーはとにかくバラの香りが好きで、特に黒バラが好き。そこで彼女がメインでディレクションしたのが『パリ植物園のバラの下で』。もちろんミドルノートには黒バラを使用。5区にあるこの広大な植物園には自然史博物館もあって、幼いころにバラのアーチをくぐる時に見た“バラの空”とその香りが、私には強烈に印象に残っているわ」
ほかにもヴェルサイユの歴史の力強さをウッディで利かせたシトラス系の「オランジェリーの爽やかな瞬間」、ルーブル美術館のリシュリュー翼の古びた木の床のきしみ、ワックスやホコリも混ざった歴史の匂いに着想した「リシュリューの部屋で物思い」、世界中の花々や樹木、観葉植物が多種多様に揃うエキゾチックなムードを描いた「オートゥイユ温室庭園の静寂」など、それぞれの香りに豊かなストーリーが隠されている。
「マルセル?プルーストの『失われた時を求めて』の有名な一節にあるように、香りは過去の記憶や感情と密接に結びついている。一つひとつの香りが何かを想起させる、そんなコレクションに仕上げているので、脳裏に潜む無意識的記憶とともに楽しんでほしいわ」
ビューティ?ジャーナリスト
大学卒業後、航空会社、化粧品会社AD/PR勤務を経て編集者に転身。VOGUE、marie claire、Harper’s BAZAARにてビューティを担当し、2023年独立。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了、経営管理修士(MBA)。専門職学位論文のテーマは「化粧品ビジネスにおけるラグジュアリーブランド戦略の考察—プロダクトにみるラグジュアリー構成因子—」。
■問い合わせ先
ドルチェ?ヴィータ?エッセンツィアーリ:公式サイト
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