
Image by: ? ISSEY MIYAKE INC./Frédérique Dumoulin-Bonnet
2025年10月3日、「イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)」が2026年春夏コレクション「Being Garments, Being Sentient」を発表した。デザイナー近藤悟史は「衣服は意識を持つのだろうか」という問いを出発点に、衣服と身体の関係を再考する試みを行った。
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音楽と空間がつくる「始まり」の高揚感
会場は改修で長期閉館中のポンピドゥー?センター。電子音響音楽作曲家タレク?アトゥイ(Tarek Atoui)が手がけたサウンドスケープが、石や水、獣皮、陶器、磁器といった原始的な素材とともに配置されていた。それはまるでアート作品のように空間を包み、まるで楽器自体が意識を宿したかのようだ。ショーが始まる前から、観客はテーマの世界観へ引き込まれていった。
脱皮する衣服 ─「生き物」としてのフォルム

ファーストルックは肩が誇張されたシルエット。ショルダーが吊り上がり、服が身体から浮かび上がるように見える。このシリーズが提示したのは、衣服を「意思を持つ存在」として捉える視点。例えば、ジャケットの袖がトラウザーから突き出す、片腕だけを露出する、袖を思いがけない場所に配置する……。着方によって更新されるフォルムは「衣服が生長して脱皮する」さまを造形化した。脱皮=成長=再生。有機的で神秘的な佇まいが、衣服の新たな可能性を映し出した。




消費社会を映す「A SHOPPER’S BODY」
中盤で登場した「A SHOPPER’S BODY」は観客の視線を釘付けにした。薄手のジャージー素材に大胆なポケットを備え、トイレットペーパーやカップ、洗剤ボトルまで詰め込んだ衣服が、身体の輪郭を歪に浮かび上がらせる。造形は無限に変化し、衣服自体が「欲望」を体現しているかのよう。第二の皮膚のように密着するその姿は、過剰消費が人間に染み込み、皮膚の一部になったことを示すかのようだった。シニカルで痛烈な批評性を秘めたシリーズだ。




衣服の境界を壊す
続いては「表と裏」という概念を取り払ったシリーズ。裏返しても正面として成立する仕立てにより、ジャケットの裏地がシャツのように見えたり、逆に着れば背中にシャツを背負った印象になった。遊び心と機能性を兼ね備え、衣服の常識を揺さぶる。また、一枚布を筒状に仕立て、身体と布の余白そのものをデザインするアプローチも登場。衣服は形をつくるものから、身体と空間を結びつける装置へと拡張されていた。




都市と自然の共鳴 ─「URBAN JUNGLE」
ヤシ科植物から着想した「URBAN JUNGLE」シリーズでは、写真を落とし込んだプリント「URBAN JUNGLE JERSEY」と、葉の張りやしなやかさを再現したプリーツ素材が登場。前者は写実性を、後者は有機的な動きを宿し、衣服が都市と自然の狭間で生きているように振る舞った。さらに、袖や襟、穴を意外な位置に配したニットも披露。組み合わせ次第で多様に変化する自由さは、衣服が自らの意思で変容しているかのようだった。


カンペールとのコラボレーション


今季もフットウェアブランド「カンペール(Camper)」とのコラボレーションが登場。先シーズン登場した、一枚の革で足を包み込む「Peu Form」を衣服に落とし込み、ドレープを描きながら一枚革のように身体を覆う有機的な造形をみせた。モデルがブランドの箱を掲げるという、イッセイミヤケには珍しい直接的な演出は意外性を帯びていたが、それは「消費」や「物欲」を扱うシリーズへの布石でもあった。また、新作スニーカー「Karst Finch」は、軽量で伸縮性のあるアッパーと、カンペールの代表作「Karst」のソールを組み合わせたモデルで、鮮やかなカラーリングが印象的。都市を軽やかに歩く「遊び心」を提案する。



衣服は意識を持つのか
今シーズン、イッセイミヤケが示したのは、衣服を「生き物」として捉え直す視点だ。哲学的な問いかけと遊び心あるデザイン、そして音楽演出が融合し、ファッションとアートの境界を揺さぶった。衣服は静止した物体ではなく、着る人や都市、自然と共鳴しながら変化する存在__。そんなメッセージが浮かび上がる。ブランドが提示した「衣服の意識」というテーマは、私たちの装いの意味や可能性を新たに広げていくだろう。


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