東京の街を舞台に、どこか既視感がある日常ながらも物憂げで時には思わずクスッと笑ってしまうスナップ写真を撮るオカダキサラ。そんなオカダによる連載「歳時キサラ」。独自の観察眼で切り取られたその季節ならではの4枚の写真を、それぞれに付随するタイトル&テキストと共にお届け。夏本番を迎えた7月の東京。オカダがついついシャッターを切りたくなったのはどんな瞬間?
さいじ‐き【歳時記】
1,一年12ヵ月、または季節に分かち折々の自然?人事などを記した書物。
2,俳句の季語を集めて分類?整理し、解説や例句を載せた書物
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河川敷ワンダースランド
河川敷の橋の下、ご老人たちが将棋を指していた。
彼らはその日集まった人たちでゲームなど好きなことをして過ごし、夕方には帰っていくという。
小さい頃、大人に邪魔されずに遊べる秘密基地が欲しかった。
ここは誰からも見付けられるオープンな場所で、人の出入りもかなりある。
だけど、幼かった頃の私はきっと、こういう場所が欲しかったんだと思う。
「晴れの日はたいてい誰かいるからまたおいで」と帰り際、誘ってくれた。
あろうがなかろうがアレやコレ
7月7日に、東京の天気が晴れる確率は約30%だそうだ。
「雨じゃ彦星と織姫は会えないね」とよく聞く。
でも、星空は雨雲の向こうにあるので、彼らの逢瀬の障害にはならない。
恋人同士のアレやコレを雲のカーテンで隠してくれる梅雨は、粋な奴ですらある。
しかしこれは新暦の話。
旧暦では、七夕は1ヶ月ずれて8月上旬。梅雨も開けている。
彦星と織姫にとって、人の視線は大した問題ではないのかもしれない。
脱ぎ捨てたい
汗と埃まみれになった仕事の帰り道。
せめて視覚だけでも爽やかに、と海岸に寄ったのが間違いだった。
日差しから逃げられない上に、潮風が体にまとわりついて不快感が増した。
海に浸かればこの暑さから解放されるのだろうか。
しかしそうすれば、帰りがより面倒になる。
少し向こうで、学生たちが服を脱いで海に飛び込んでいった。
その清々しさに、暑さが一瞬だけ遠のいた。
やっとだね
徳島県の伝統芸能で有名な阿波踊りは、政府への抗議として踊られたこともあるらしい。
囃子言葉の意味を調べてみると、阿波の人たちの勝気な精神が垣間見ることができて面白い。
気合入れの「ヤットサー、ア、ヤットヤット」の掛け声は、元は「久しぶり、元気かい?」という意味があるらしい。
久々の舞台に踊り子たちの足さばきは「待っていました」とばかりにキレキレで、見惚れずにはいられなかった。
1988年東京生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。大学在学中に東京をテーマにストリートスナップを撮り始める。忘れられてしまうばかりの瞬間には、毎日の見方を変える不思議な仕掛けが隠されているのではないか。そんな思いで街にレンズを向け続けている。第4回1_WALLファイナリスト、2015年度ユーナ21入選、2016年度コニカミノルタフォトプレミオ入選。
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