東京の街を舞台に、どこか既視感がある日常ながらも物憂げで時には思わずクスッと笑ってしまうスナップ写真を撮るオカダキサラ。そんなオカダによる連載「歳時キサラ」。独自の観察眼で切り取られたその季節ならではの4枚の写真を、それぞれに付随するタイトル&テキストと共にお届け。オカダがついついシャッターを切りたくなったのはどんな瞬間?
さいじ‐き【歳時記】
1,一年12ヵ月、または季節に分かち折々の自然?人事などを記した書物。
2,俳句の季語を集めて分類?整理し、解説や例句を載せた書物。
1988年東京生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。大学在学中に東京をテーマにストリートスナップを撮り始める。忘れられてしまうばかりの瞬間には、毎日の見方を変える不思議な仕掛けが隠されているのではないか。そんな思いで街にレンズを向け続けている。第4回1_WALLファイナリスト、2015年度ユーナ21入選、2016年度コニカミノルタフォトプレミオ入選。
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『グラスホッパー』
9月になっても秋らしさを感じない中、いたる所で草刈りが行われていた。青々と生い茂っていた夏草が無くなると、地面を覆っていたのは意外にも茶色い草だった。ギラギラ輝く太陽にばかり目がいってしまっていたけれど、季節は着実に変わっていっていた。剃り残された無駄毛のような草が、心細く海風に揺れていた。
『優しい拳』
夜、格闘技の練習をしている2人を見かけた。
練習の邪魔にならないかと心配しながら声をかけたけど、2人とも気さくに対応してくれた。爽やかな笑顔。さっきまで鋭いパンチやキックを繰り出していたとは思えない。
「格闘技している人は大抵優しい。自分が強いのを知っているから」という言葉が胸に残った。
帰ってから見様見真似で鏡の中の自分に向かってエアパンチしてみた。私はまだ優しくなれないかもしれない。
『凪のヨット』
都内では進むことは簡単だけど、立ち止まることは難しい。
平日の「おだいばビーチ」は都会ではあるものの、急かすばかりの街中から切り離されたような場所だ。
いろんな人が海辺でくつろいでいた。
穏やかな波音が都会の時間を洗ってくれる。
遠くを眺めている4人の背中が、映画のワンシーンのようだった。
私も彼らと同じ方を見た。
魚が跳ねて小さな飛沫があがった。
『つきとつる』
帰り道、いくつかの団体さんが河川敷に向かっているのを見かけた。
花火大会でもやるのかと後を付いていったが、川辺で出迎えてくれたのは眩しい満月だった。
そうか、今日は中秋の名月だったのか。
月なのにサンサンと降り注ぐ光。街灯よりも明るく川を照らしていた。
釣り人が釣果を確かめていて、月も一緒に覗いているようだった。
■屋外型国際写真祭T3 PHOTO FESTIVAL PHOTO MARKET
日時:2022年10月9日(日)
営業時間:11:00?17:30
会場:東京スクエアガーデン 1階 貫通通路
公式サイト
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