
2026年秋冬コレクション
Image by: kolor

2026年秋冬コレクション
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ファッションの世界において、真価が問われるのは常に「2シーズン目」である。デビューコレクションが名刺代わりの挨拶であり、祝祭的な期待感に包まれるものだとすれば、続く2作目は、その方向性が一過性の実験なのか、あるいはブランドの未来を決定づける本質的な進化なのかを証明する、試金石となるからだ。熱狂の魔法が解け、シビアな審美眼に晒されるこのタイミングこそが、クリエイションの真の強度を露わにする。
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まさにその分水嶺に立つ「カラー(kolor)」が、パリで2026年秋冬コレクション「The Waves」を発表した。クリエイティブディレクターに就任した堀内太郎にとっては、2026年春夏でのデビューに続く2作目となる。「私自身、いま新しい航海の途中にいる」。ショー後のインタビューで堀内がそう語ったように、新体制が本格稼働した今季、彼らが選び取った舞台は「変化」という荒波のただ中だった。インスピレーション源となったのは、ロバート?エガースの映画「ライトハウス」。1890年代の孤島を舞台に、荒れ狂う冬の海と、光に魅入られた灯台守(Lighthouse Keeper)の物語を紡ぎ出した。
会場に入り耳に入ってきたのは、コーネリアス(Cornelius)が手掛けた音楽で、その歌声はAIによって生成されたものだという。「新しいものに向かうのは怖いけれど、同時に面白い」。堀内はそう語り、テクノロジーへの肯定的な姿勢を見せる。原始的な嵐の情景と、最新のAI技術。このコントラストの中で、ショーは幕を開けた。
ファーストルックから提示されたのは、「生存」への渇望と時間の堆積である。縮絨コートは、一見レイヤードされているように見えながら、ベストとシャツのディテールを融合させて一着に仕立てられ、シャツには潮風に打たれたような強いシワが波打つ。ほつれ落ちていくニットも含め、それらはまるで難破船から打ち上げられた布の断片のようであり、過去の記憶を呼び覚ます装置として機能している。「寒い海辺で、激しい雨風を凌ぐための"暖かい服"を作りたかった」。堀内がそう明かす通り、こうした「経年変化」の表現は、極めて理知的な構造と機能性の上に成り立っている。創業者?阿部潤一が得意とする「素材?色?パーツの不自然な組み合わせ」という“違和感”の美学は健在だが、今季はそこに堀内太郎の“構造的な静寂”が深く浸透している。勤続年数20年を超えるパタンナーが「(堀内の)線は阿部さんの描くカーブよりも真っ直ぐだが、シルエットは丸みを帯びている」と証言した通り、一見無造作に身体にまとわりつくドレープや歪みは、徹底的に計算された直線の集積によって生み出されているのだ。


コレクションの中核をなすのは、異なる文脈を接続したハイブリッドな衣服群だ。解体されたミリタリーウェアは端正なテーラードジャケットにドッキングされ、光沢のあるソリッドな素材にはケープのようにニットを組み合わせている。また、今季際立っていたのは、ジェンダーの境界を曖昧にするアプローチ。「僕もウィメンズを着るし、女性もメンズを着る。区別はない」と語る堀内のフラットな視点は、カラーが持つ「男らしさ?女らしさ」の定義を、より現代的で流動的なものへと拡張している。




物語を彩るディテールも秀逸だ。ペプラムのブルゾンに見られる波打つフォルムは、果てしなく反復する波の運動そのもの。ケープのように取り付けられた袖は、嵐の中でのサバイバルを想起させると同時に、古い殻を脱ぎ捨てようとする生物的な変容を感じさせる。映画の中で主人公たちを狂わせる灯台の光は、ゴールドに輝くデニムや、襟に魚を模ったビジューをあしらったコート、鮮やかな黄色の漁師風ダッフルコートとして具現化された。


ショーは重苦しいダークトーンから、徐々に光を感じさせる色彩へと推移していった。「灯台は本来、正しい道を照らす存在。ダークに始まるけれど、その先に明るい何かがあるといい」。その言葉通り、フィナーレに向けて現れた軽やかなピースは、嵐を乗り越えた者だけが知る希望の光のように映った。
「理性で設計されたロマン」と「理屈で作られた違和感」。似て非なる二つの哲学が交錯するこの2シーズン目は、カラーというブランドが新たなフェーズへ移行したことを決定づけた。阿部の「ノイズ」は堀内の「構造」によって整音され、堀内の「静寂」は阿部の「毒」によって物語性を帯びる。「進化は意識しているけれど、それが何なのかは人が判断すること」。謙虚にそう語る堀内だが、真価が問われる嵐の海で、カラーは確かな航路を示してみせた。それはもはや、かつてのカラーの延長線上にはない。静かなる轟音を響かせながら進む、新たな巨船の出航であった。
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