ニコラ?ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)ほど、近未来を想起させるファッションデザイナーはいない。1997年、25歳の若さで「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のクリエイティブ?ディレクターに抜擢されて以来、ニコラは誰にも真似できない美学を徹底して追求し、時代の最先端を独自に切り拓いてきた。SF的であるだけでなく、2Dと3Dの間を行き来し、モチーフのダイナミズムを取り入れ、様々な文化やテクスチャーを大胆に融合させたクリエイションは、いつも未来を感じさせるものだった。
2012年、彼は15年間勤めた「バレンシアガ」と袂を分かち、2013年末に「ルイ?ヴィトン(Louis Vuitton)」ウィメンズのクリエイティブ?ディレクターとして新たな一歩を踏み出した。同ブランドのプレタポルテの礎を築いたマーク?ジェイコブス(Marc Jacobs)の後を継ぐのは、難しい仕事だったに違いない。しかしニコラは、ブランドのエスプリ(フランス語で精神の意)に新鮮な視点を注入し、次なるステージへと押し上げることに成功。クルーズを含めると30回のランウェイを開催し、31回目となる今回の2024 年秋冬コレクションで、晴れて就任10周年を迎えた。ラグジュアリーブランドのディレクターがめまぐるしく入れ替わる昨今において、これは一つの偉業と言っていいだろう。それほどニコラのクリエイションは揺るぎなく安定しながらも、時代に呼応し柔軟に変貌してきたのだ。
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ショー会場は、ルーヴル美術館の中庭クール?カレ。10年前のファーストコレクションを発表したメモリアルな場所であり、それ以降も何度もショーを開催してきた、ニコラとルイ?ヴィトンの双方にとって特別な場所である。空間美術はアーティストのフィリップ?パレーノ(Philippe Parreno)とプロダクション兼デザイナー、ジェームズ?チンランド(James Chinlund)が手がけた。特設された透明な施設は、スレート、鉱物、ガラスで未来的な温室のように装飾され、超新星爆発のような照明は煌々と輝き、周囲を照らす。
スポーティーなパーカにスクエアトゥのブーツを履き、袖からはフリンジ付きのグローブを覗かせた近未来的なファーストルックは、『イカゲーム』で一躍脚光を浴び、ブランドのアンバサダーである俳優のチョン?ホヨン。ここ数シーズンで何度もランウェイを歩き、ブランドの顔として定着している。
同じくアンバサダーを務める、Stray Kidsのフィリックスも、その後ランウェイに登場した。
今回のコレクションは、過去10年間の功績を讃えるレトロスペクティブでもある。膝下のボリュームを増したスカート、幾何学的なモチーフ、メタリック刺繍のジャケット、トロンプルイユ(騙し絵)など、かつてのデザイン要素が散りばめられながら、一つのコレクションとしてまとまりを持ってアップデートされており、その編集力の高さを見せつける。
Image by: Louis Vuitton
Image by: Louis Vuitton
Image by: Louis Vuitton
Image by: Louis Vuitton
Image by: Louis Vuitton
Image by: Louis Vuitton
また、多くのルックに登場したフリンジとファーのグローブや動物の耳の形をしたビーニーなど、童的な可愛さをキャッチーに取り込みながら、最後はアシンメトリーのドレスでしっかりとエレガントにショーを締め括った。
Image by: Louis Vuitton
Image by: Louis Vuitton
Image by: Louis Vuitton
Image by: Louis Vuitton
Image by: Louis Vuitton
昨年11月には現職の5年契約更新が正式に発表され、ニコラと「ルイ?ヴィトン」の関係はすごぶる順調のようだ。過去を振り返り、次なる10年を見据える今回のコレクションを経て、次に出てくるのはどんなクリエイションだろうか。楽しみに待ちたい。
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