
Image by: Courtesy of Mame Kurogouchi
黒河内真衣子が手掛ける「マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi)」が2026年春夏コレクション「Reflection」を発表した。ブランド15周年を迎えた今シーズン、デザイナー黒河内真衣子が向き合ったのは自身の原風景。雪や霧に覆われた故郷の長野、特に、祖母の家の窓ガラス越しに見た光や景色、昭和のガラス器で食べたかき氷の記憶......。断片的で曖昧な「透明な思い出」を、衣服という形に結晶していった。
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掛けられたジャケットが呼び覚ます記憶
ショーは祖父をイメージしたマニッシュなルックから幕を開ける。ライトグレーやベージュのシアーなセットアップは、静穏でありながらどこか懐かしい余韻をまとっている。着想源は「祖父が亡くなった後、祖母が彼のジャケットをずっと部屋に掛け続けていた光景」なのだという。その切ない記憶は、透けるウールやナイロンのテクスチャーへと姿を変えた。



和ガラスが宿す、儚さと美しさ
コレクション全体を流れていたのは、和ガラスの儚さ。江戸から大正にかけて広まったガラスは、壊れやすさゆえに独自の美を持つ。シアーなジャカードドレスや、オーロラのように輝く三層織りのジャケット、すりガラスを思わせるジャージーが、その曖昧な美しさを映し出していた。




朝焼けと夕暮れの色彩をまとう
カラーパレットの中心には、朝焼けや夕暮れのグラデーション。夏の夕刻、ふと現れる淡いピンクの空を思わせる色彩だ。和ガラスの乳白や薄青のニュアンスに、パステルピンクやパープルが重なり、懐かしさとモダンな感覚が溶け合っていく。スタイリングにもそんな色彩の遊び心がのぞく。「まるで子どもの頃に戻って、もう一度景色を見直すような感覚だった」という通り、イノセントなポップさが交錯していた。




見えないものや掴めないものを形に
ショーのクライマックスは、つららや凍った水たまりを思わせるドレスやセットアップ。シルクやフィルム糸を重ね、つららの先から滴る水滴の動きを布で表現している。完全な透明ではなく、ほんのり濁ったグレーやオーロラの色合いを纏い、光を受けて移ろうその生地は、掴めない記憶がふいに形を得たかのようだ。「見えないものや掴めないものをどう布に織り込むか。曇りガラスの先に広がる風景を、もう一度呼び起こしたかった」と黒河内は語る。



記憶の断片を布に織り込む
「日本の風景や家庭の景色と深く結びついて生まれる服。ステレオタイプな『日本』ではなく、個々の記憶や生活に根ざした景色こそ、自分にとっての日本らしさだと考えています」。マメ クロゴウチの15周年の節目となる今季は、黒河内のパーソナルや鋭い感性、創作の軌跡が色濃く反映されたコレクションとなった。それは、透明な記憶の断片を服に織り込んだ、やわらかな物語のようであった。
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