2024?25年秋冬コレクション
Image by: MARNI
主人公が16世紀から20世紀まで300年以上にわたり時代を超えて生き、男性から女性に転換するというジェンダーを扱った小説「オーランド」で知られるイギリスの小説家ヴァージニア?ウルフ(Virginia Woolf)がファッション界に与えた影響は「コム デ ギャルソン(COMME des GAR?ONS)」に「メットガラ(Met Gala)」と枚挙に遑がなく、「マルニ(MARNI)」を手掛けるフランチェスコ?リッソ(Francesco Risso)もまたその限り。ヴァージニア?ウルフがかつて友人を田舎に招待する手紙の中で、「服は持ってこないでください」と書き綴った手紙に着目し、その解釈について「私は、彼女が彼らに裸で到着することを示唆しているのではなく、服の懲罰的な構造とその象徴的な意味をすべて剥ぎ取るように勧めているだけだと理解しました」と語るリッソが作り出した2024?25年秋冬コレクションショーは、「マルニと言えば柄やカラフルさ」というイメージをも彼岸に押しのけるほど、黒を中心にプリミティブなデザインでまとめられた。
デザインプロセスに画像や参照を使用することを禁止
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視覚情報を咀嚼し、服のデザインとして落とし込む行為はファッションデザインにおいて最も一般的だが、今シーズンのマルニはデザインプロセスで画像や参照を使用することを禁止することで、ヴァージニア?ウルフの「服は持ってこないでください」という言葉をコレクションに反映。幼少期からデザインが世界とコミュニケーションをとるための手段だったというリッソは、ここ数ヶ月間、クリエイションが元の状態に戻るとは何を意味するのかを自問してきたそうで、今回はリファレンスを排除し、彼の内面、引いてはマルニの原初的なクリエイションとは何かを模索した。
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あえてカラフルさや柄物を封印
原初的なクリエイションを表現する上で、今シーズンのマルニはあえてブランドのらしさでもあるカラフルさや柄物を封印。半数近くを占める黒のルックはその最たるもので、腰の位置から大きく広がったフレアドレス、キャンバスを黒で塗りつぶしたかのようなドローイング柄をプリントしたパンツやコート、前掛けのようなレザーのポンチョなどフォルムで見せるプリミティブなデザインはマルニでは珍しい提案だ。動物と同様の状態に戻って思考したというように、理性的な人間的思考から距離をとり、記号性から解放されるため生地を触って手を動かし、触覚、視覚など五感を頼りにコレクションを作り上げていったのだろう。それ故、いずれも形容しずらいアブストラクトなデザインとなっている。
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黒から一転、動物と同様の状態に戻って思考したという思いと共に、さまざまな固有の色を持つ動物にプリミティブさを感じたからか、後半はレオパード柄やシアリングなど動物を連想させるデザインがコレクションを彩った。油絵のようなレザーにアクリル絵具を塗ったジャケットはアブストラクトそのもので、リッソが幼少期に感じた"何かが作られる前の状態"の素晴らしさ、コンテクストがなく何物からも解放された自由な表現を、30周年を迎えたマルニの指針として改めて示した。
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