
Image by: 越智康貴
古民家につくられたホラーアトラクション「凶遡咽び家」で開催された、「オバケン」とのコラボレーションによる「ミキオサカベ(MIKIOSAKABE)」のプレゼンテーション。
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「forgotten」と名付けられたプレゼンテーションは、その名の通り、過ぎ去った記憶、忘れてしまったものを表すように、キッチン、寝室、リビングなどに配置されたモデルが、自身が体験したものではない記憶を断片的に浮かび上がらせる。観客は間取り図を渡され、自由に観て回れる形式だった。

Image by: 越智康貴
「おかぁさーん、着替えドコォ?」「そこにあるでしょ」
「ありがと、おかぁさーん」
「おかぁさん、服が汚れちゃった」「何して遊んでたの、早く着替えてきなさい」
「おかぁさーん、着替えドコォ?」「そこにあるでしょ」
幼い少女と母親の会話が、やや湿気た家屋内で反復しながらノイズ混じりに響く。

Image by: 越智康貴
1996年のカレンダー、ベッドサイドでしゃがみ込み俯く少女、放り出されたソックス、花柄のカーテン、ブラウン管のテレビジョン、別の誰かが抱きついているようなジャケット、ショートホープ、化粧水、大きな肩パッドのついたトランスペアレントなブラウス。昭和的モチーフとコンテンポラリーな洋服が生み出す違和感。モデルは虚空を眺め、時折こちらへ顔を向けては厚い前髪で隠れている目が“合っている”畏怖を第六感に訴えかけてくる。
それから、身体が前後逆転している女学生風のルックでは洋服も反転した作りになっていて、シューズまでもが靴下が外側に一体化したデザインになっていた。

Image by: 越智康貴
ミキオサカベは誇張の上手いブランドだと思う(嘘に近い、という意味でも)。それはギャザーの寄せ方、襟や袖の長短の付け方、シルエットの巨大化など、洋服の構造そのもののことでもあるし、洋服や演出を通したイメージの倍音的表現のことでもある。今回のことで言えば、視覚による痛覚の共有、喪失の追体験などが、モデルの顔を隠すことで観客にとって内外の二項対立を超えた超常現象的表現として提出されていた。

Image by: 越智康貴
日本美術に於いて幽霊画は厄払いのような役割も持っていると聞いたことがある。それから、社会情勢が悪くなるとホラーがウケなくなるとも──現実世界の方が恐ろしくなってしまうから?
それはさておき、昨今のファッションやアートの分野で、テーマやコンセプトに基づくアウトプットが弱く、後付けなのかと思えてしまう表現が多い中、具体的で明確なプレゼンテーションがデザイナーの底力を感じさせる素晴らしいコレクションだった。
狂気や死が、正反対にありありとした生のリアリティーを予感させていた。

Image by: 越智康貴
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