2020年に、ファンに惜しまれつつ日本事業を撤退した米国のカジュアルアクセサリーブランド「クレアーズ(claire's)」の元商品企画チームとプレスメンバーが集結し、立ち上げた「ミナキュート(minacute)」が好調だ。2022年度の売り上げは昨対比で200%の伸長をみせ、今年4月に行われた大阪でのポップアップストアでは、原宿でのポップアップと比較して売り上げは約3倍、販売個数は約2倍※となり、まだ無名ブランドながら、約1000人が来店した。ミナキュートの立ち上げとその躍進にはどのような背景があったのか。ミナキュート ディレクター兼プレスチーフの大野泰代に聞いた。
※2021年のデビュー直後に原宿竹下通りで行われたポップアップストアと比較して。
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クレアーズなくしてミナキュートなし
ミナキュートは、アメリカ発のぬいぐるみ「タイ(ty)」など、海外商材を取り扱う総合代理店メテオエイパック(Meteor Apac)が運営。同社初となる自社ブランドとして2021年に「お披露目会」と称した展示会を開催し、その後、本格デビューを果たした。現在、全国のトイザらス約150店舗と取引があるほか、池袋サンシャインシティアルタ地下1階には直営店「ミナキュート コンセプトストア」をオープンしている。
ミナキュートでディレクターを務める大野氏は、クレアーズに新卒入社。日本事業を撤退するまでの14年間従事した。大野氏はクレアーズの撤退当時を振り返り「イオングループ内でも希望があれば雇用すると告げられたが、必ずしもファッションにまつわる仕事ができるわけではなかったので転職を決めた」と回想。すでに退職していたクレアーズの元スタッフがメテオエイパックに就職しており、大野氏を誘ったという。続けて、ミナキュートが立ち上がった経緯について「メテオエイパックの中で、アクセサリーブランドを立ち上げる企画が発足したのも、クレアーズの日本撤退が大きかった」とし、クレアーズの元スタッフの熱意と、クレアーズが撤退したことにビシネスチャンスを見出したメテオエイパックの利害が一致する形で実現したという。
「ポップでパワフルなインパクトのあるアイテムが手頃な価格で手に入るのはクレアーズの最大の強みでした。当時は、フォーエバー 21(FOREVER 21)や、スイマー(SWIMMER)など、様々なブランドが撤退や閉店を余儀なくされていたこともあり、このままだと『生きるために“カワイイ”は不要なのか』とやりきれない気持ちでした。そういった、オシャレの楽しさや、心ときめくアクセサリーと出会う体験、カワイイを愛する文化を無くしたくなかったし、これからも届けていきたいという想いが、現在ミナキュートに携わっている元クレアーズスタッフには強くありました。また、事業撤退を知ったファンの皆さんが“クレアーズロス”になっているのを見て、プチプライスで、かわいいアイテムが手に入るお店の需要はまだまだあるんじゃないかと、ミナキュートの企画が立ち上がりました」(ミナキュート ディレクター兼プレスチーフの大野泰代)。
ミナキュートは、大野氏を含めた4人でチームが構成されており、全員がクレアーズの商品部やプランナー、バイヤーなどを務めていたという。クレアーズの事業撤退から1年後の2021年に本格デビューを果たしたミナキュート立ち上がりまでのスピード感について、大野氏は「勝手な使命感が故」と形容する。
「クレアーズへのリスペクトを込めた、カワイイ文化を体現するようなブランドを早く作らなければというプレッシャーがありました。当時は、様々なブランドが消滅していた時だったので、早くブランド立ち上げて、みんなに『大丈夫だよ』と届けたかったんです」(大野)。
人気は「プリンセス系アイテム」 美少女戦士アニメ放映世代からの支持も
ミナキュートのコンセプトは「ボーダーレスカワイイ」。ブランド名にはその名の通り「みんなのカワイイ」という想いが込められている。大野氏が「ファッションは未だに年齢やルール、流行といった縛りが顔を出しがちなジャンルですが、クレアーズを通して何者であろうとも、自由にファッションを楽しむことが素敵なことだと体験しています」語るように、クレアーズの『カワイイを純粋に楽しむ体験』というDNAが脈々と流れており、それはアイテムラインナップにも表れている。
「『カワイイはすべての壁を超える』という想いから生まれたブランドなので、性別や年齢、世論を気にすることなく、心ときめくアクセサリーとの出会いを意識したイヤリングやネックレス、ティアラ、ステッキなどを取り扱っています」(大野)。
ブランドのデビューから2年が経った現在では、200?250種類のアイテムを常時展開。特に人気のアイテムは、ティアラやステッキなどのプリンセス系アイテムだ。推し活やホームパーティー、プリクラ撮影時の小道具としての一定需要のほか、アニメ「美少女戦士セーラームーン」や「プリキュアシリーズ」「おジャ魔女どれみ」「カードキャプターさくら」などの放映世代からの購買も多く「それを持って外に出るというわけではなく、自分の乙女心の結晶として部屋に置いておくもの」としての支持が高いという。購買層も幅広く、30代前半から後半までの美少女戦士アニメ世代から、Y2Kトレンドの波に乗ったハイティーンが購入しているそうだ。また、500円?900円という価格帯も「お菓子やガチャガチャを買う感覚で購入していただいている」と、購買に好影響を与えていると分析。また、「季節に対してもボーダーレスでありたい」という考えから、ファーやニットなどのシーズンアイテムは展開しないようにしているのだという。
スイマーのアイテムも一部展開するコンセプトストアの狙い
国内唯一の直営店である「ミナキュート コンセプトストア」では、同ブランドアイテムのほか、ゲストブランドとして「スイマー」のアイテムを一部取り扱っている。経緯について大野氏は「たまたま、かつてスイマーが実店舗を構えていた隣にコンセプトストアをオープンしたこと」「クレアーズの日本撤退と、スイマーの復活が同時期であったことからスイマーの現ディレクターのひづめみか?る氏と交流があったこと」の2つを理由として挙げた。
「個人的にスイマーのファンだったこともあり、スイマー復活の際、ひづめさんにDMを送ったんです。『これからの日本のカワイイとトキメキはスイマーに託します!』と(笑)。その後、ミナキュートがデビューし、コンセプトストアをオープンする際に、隣がかつてスイマーの店舗だったことを知りました。だったら『おかえり、スイマー』という気持ちで、ミナキュートのお店にもスイマーのアイテムが置ければ、と再度ひづめさんにお声がけしました。ミナキュートとスイマーが同じ店舗内に並ぶことで、現在の『日本のカワイイを象徴する売り場』になればいいな、と思っています」(大野)。
大野氏の「日本のカワイイを象徴する売り場」を体現するように、コンセプトストアにはスイマーのほか、サン宝石※現在は取扱休止、マイリトルポニーなどを展開。そのどれもが、ミナキュートの掲げる「ボーダーレスかわいい」のコンセプトのもと集合してくれたという。
ミナキュートが目指すのは「クレアーズの復活」ではない
クレアーズのDNAを脈々と受け継ぐミナキュートだが、「クレアーズを復活させようというわけではなく、クレアーズが国内の可愛い文化に与えてきた影響を継いでいきたい」と大野氏は強調する。
今後の展開として、他ブランドやクリエイターとのコラボアイテムを増やすほか、家電量販店や玩具量販店、雑貨屋などの販路拡大を目指す。大野氏は「多店舗展開をするのはまだ先」とした上で「スタッフと顧客のカワイイを持ち寄るような、共感の場が必要」と話し、積極的なポップアップストアの展開と、直営店オープンに対して意欲をみせた。
■ミナキュート
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