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【連載:私が黒髪をやめた話】2人目-Chappyさん 35歳 美容師

Image by: Miyu Takaki

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【連載:私が黒髪をやめた話】2人目-Chappyさん 35歳 美容師

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私が黒髪をやめた話

ある日、私は黒髪をやめ、金髪にした。
理由はたくさんあった。凡人だと思われることが嫌だった。気が弱い女のように見られることが嫌だった。少しでも若く見られたかった。
黒髪をやめたことで、自分を守る為の鎧を身につけたような気持ちになった。

高貴さの象徴ともされるブロンドヘアー。
不良?反抗などのイメージを持たれていたヘアブリーチ。
アニメキャラを彷彿ともさせるカラフルなヘアカラー。

様々な選択肢がある中で、私が出会ったあえて“黒髪をやめた人たち”の話。
2人目は美容師として働き髪色を変化させる側でもある、35歳のChappyさん。(写真?文:髙木美佑)

Chappyさん/35歳/美容師

彼女と知り合ったきっかけは、私の友人を含め行った撮影のとき。友人がモデルで、私がカメラマン、そして彼女がヘアメイクを担当した。
初めて打ち合わせで会った時から彼女は金髪で、とびきり笑顔で明るくユーモアもあって、太陽みたいな人だった。
美容師として働き普段から多くの人と関わる機会が多い彼女の仕事柄、誰とでもすぐ打ち解けられるのかな、と思っていた。
その作品撮りは今でも定期的に行われており、年に一度は会う関係性となっている。

私が彼女の一番好きなところは、他の人なら軽く聞き流してしまうような話題でもちゃんと話を聞いてくれるところ。
いつもは天真爛漫で明るいのに、将来や仕事の話になると、至って真剣な表情になる。
人の話を決して馬鹿にすることはない。

彼女にならこの連載企画についての話もできるし、そんな彼女の髪についての話を聞いてみたかった。
メッセージを送ると、彼女は快くOKしてくれた。
近日中にスケジュールを合わせ、彼女の仕事の合間に会うことになった。

Image by: Miyu Takaki

蒸し暑い日の昼、久しぶりに会う彼女は髪をバッサリ切っていた。
彼女が専門学校を卒業してからずっと仕事場にしている原宿で写真を撮らせてもらった。
普段撮影現場にいることはあっても、自分が撮られることはないと話す彼女は少し緊張していて、いつもよりも一回り小さく感じた。
人混みをかき分けながら歩き、映画や新しくできたお店の話をした。彼女は知ったかぶりをしない。

20歳で専門学校を卒業し、美容室に就職。それ以来ずっと金髪にしている。
髪が伸び根元に地毛の黒髪が出てくると、毎月リタッチをしてブリーチ髪を保ち続けている。

そもそもどうして黒髪をやめたのかと聞くと、「普通の子だと言われたくなくて」と話し始めた。
Chappyさんは150cmに満たない小柄な女性で、ハスキーボイス。そこにハイトーンカラーという特徴を加えて、すぐに覚えてもらえるようになりたかった。
名前を知らなくても「ほら、髪色が明るいあの子」と、“あの子”と言えばChappyさんのことだと伝わるようなキャラクター性を持ちたかった。
美容室というたくさんのスタッフが働く中でお客さんに存在を覚えてもらい、指名をもらって仕事をしていく為に、それはとても重要なことだ。

もう1つの理由は、気持ちをコントロールして毎日を楽しく過ごす為。
女性らしい格好をすると女性らしい所作になったり、パンクな格好をすると強気でいられたり、人々が洋服から多少なりとも影響を受け内面が変化するように、彼女は髪色で気持ちが変化する。
装いからの影響が強いと感じる彼女は、黒髪以外にすることで自分の気持ちを明るくコントロールしていた。
濁りのない髪色の時は、不思議と気持ちも晴れやかでいられる。

黒髪をやめてからの人生15年の中にも、数回だけ黒髪に戻したことがあるらしい。
その時は自分の気持ちに迷いがあったり、ウジウジと悩んでしまっていたのだそう。
ウジウジしている気持ちを断ち切る為に金髪にするというのならば理解しやすいけれど、ウジウジしているから黒髪にする、という逆の発想はとても興味深かった。

Image by: Miyu Takaki

彼女は千葉県出身で、真面目な両親のもとで育った。
3人兄弟の末っ子で、兄と姉は一度も髪を染めたことがないらしい。
高校を卒業するまで外泊も禁止されていた。
地元を離れ上京し金髪になった彼女をみて、両親はきっと嫌な顔をするだろうと思った彼女は、帰省する際に「金髪なんだけど、実家に帰ってもいい?」と事前に確認した。
両親は最初否定していたものの、見慣れていったのか諦めたのか、そのうち受け入れてくれた。
ただ、ずっとショートヘアーだった彼女に対して「頼むから坊主にだけはしないでくれ」と懇願をした。
両親への反抗という訳ではなかったそうだが、やってみたいという気持ちで、のちに彼女は坊主にもした。

黒髪をやめてから、何か変化はありましたか?と聞くと、「目標としていたように自分のキャラクターが確立した」と話してくれた。
彼女にとって人生のモットーは2つあり、 1つ目は“忘れられない人になること”、もう1つは“もう一度会いたいと思ってもらえる人になること”。
それらのモットーを確立するための武器が揃った。

そして、昔から周りに「変わっているね」と言われ続けていたことへの違和感がなくなったという。
人は皆、出会った人の外見から何かしらの第一印象を少なからず抱くだろう。
ブリーチをして、ハイトーンカラーという多くの人とは異なる外見にすることで、最初からある程度は変わっている人なのだと自らを提示できているのかもしれない。
髪色を明るくしてから、「心の拠り所ができた」という。

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いつまで黒髪をやめている予定?と聞くと、大きく手を挙げて「生涯ブリーチ宣言!」をされた。
確か前回会った時にも、はっきりとそう話していたことを思い出す。
彼女が彼女らしくあり続ける為に、譲れない点なのだと思う。

最後に、Chappyという名前の由来を聞いた。
Happyが周り回って、Chappyになったという。
きっと彼女の太陽のような明るさで周りの人々をHappyにしていけると思うし、そして彼女自身にもずっとHappyでいてほしい。

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髙木美佑
写真家。東京都在住。主にセルフポートレートと文章を用いて、日々の記録のように取り巻く生活と自己との関わりをテーマに制作しています。金髪に憧れたキッカケは藤井みほな先生の漫画「GALS!」の主人公、寿蘭ちゃん。

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