「モンブラン」アーティスティックディレクターのマルコ?トマセッタが描く次の100年 レザーグッズが豊富に

「モンブラン」アーティスティックディレクター マルコ?トマセッタ

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Image by: Montblanc

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「モンブラン」アーティスティックディレクターのマルコ?トマセッタが描く次の100年 レザーグッズが豊富に

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 1906年、ドイツ?ハンブルグで産声をあげた「モンブラン(Montblanc)」は、高級筆記具メーカーとしてその歴史を綴ってきた。中でも、1924年に誕生した代表作「マイスターシュテュック」は、100を越える工程を経て生み出されるクラフトマンシップの結晶だ。その端正なフォルムと優雅な書き心地から、ベストセラーとして愛され続け、2024年にはついに100周年を迎えた。「マイスターシュテュック」はドイツ語で"マスターピース"を意味するが、名は体を表すとはまさにこのことを言うのだろう。

 ペンのみならず、バッグや時計、ヘッドフォン、フレグランスなど、さまざまなアイテムを展開しているが、昨今では艶やかな魅力を放つレザーグッズが好調だ。その背景には、2021年3月にアーティスティックディレクターに就任したマルコ?トマセッタ(Marco Tomasetta)の姿がある。「クロエ」「ルイ?ヴィトン」「ジバンシィ」といった名だたるブランドで、レザーグッズのクリエイティヴ?デザイン?ディレクターを務めてきた人物だ。今回は、プロダクトデザインからキャンペーンまでを統括し、ブランドイメージの拡張を進めるマルコに、モンブラン躍進のストーリーを伺った。

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——「モンブラン」のアーティスティックディレクター就任に至るまでのキャリアについて教えてください。

 キャリアの始まりはイタリアで、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」や「フェンディ(FENDI)」、「プラダ(PRADA)」、「グッチ(GUCCI)」などにデザイナーとして携わりました。その後、パリに拠点を移し、ルイ?ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「クロエ(Chloé)」と「ジバンシィ(GIVENCHY)」に務め、2021年にモンブランへとやってきました。

——モンブランとの出会いはどのようなものでしたか?

 20年ほど前でしょうか。私にとってコレクションのデッサンとは、自分の中にある夢やヴィジョン、アイデアと実際のプロダクトを繋ぐものなのですが、モンブランの建築家用のスケッチペンを使ってみると、まるで魔法のようにうまくいったのです。それ以来、このペンは私にとってかけがえのないものとなり、20年以上経った今でも愛用しています。(話しながら、手元でさっとデッサンを描きあげる)ほら、この通り。

——早いですね! 描き終えるのに、数十秒しかかかっていません。

 私はもともと早い方ではありますが、モンブランのペンだからこそ、この早さが実現できます。商品の宣伝をしたいから褒めているわけではありませんよ。なぜならモンブランと関わるずっと前から、このペンを使い続けているのですから。

——マルコさんにとって、デッサンがいかに重要かが伝わってきます。

 まさに。私のコレクションはすべて、デッサンから始まるのです。もちろん、その後のプロダクションにおいては、イラストレーターやフォトショップといったテクノロジーを駆使しますが、出発点は手で描くという伝統的なデザイン手法にあります。

——モンブランのアーティスティックディレクター就任したとき、まず取り組むべきことはなんだと考えましたか?

 エンブレムのサイズを変えることですね。より力強くなり、すぐにモンブランだとわかる視認性が備わりました。このデザインは、ブランドにとって本当に重要な山であるモンブランをモチーフにしています。雪に覆われたモンブラン山頂の氷河を表現しているのです。モンブランの上空を通過する小さな飛行機に乗って、真上から山を見下ろしているイメージですね。私自身にとっても、モンブランという山は身近な存在です。イタリアとフランスを飛行機で往復することが多いのですが、その際にはいつもモンブランの上空を通るのです。

——マルコさんがアーティスティックディレクターに就任して以降、レザーグッズの展開が増えています。それらのデザインは、どのように考えているのでしょうか?

 アーカイヴに質の高いモダニティを加えることを意識しています。そしてモンブランにおいては、ペンはアーカイヴとの重要な接点です。ペンはすべてのインスピレーションの源であり、コレクションを構築する軸にもなります。封筒の形にインスパイアされた「エンベローブ バッグ」がいい例ですね。新しい形を作ることで、新しい世代にアプローチすることができます。そして新しいライフスタイル、新しい日常というものを提案できます。

——マルコさんは、様々なブランドでレザーデザインを手がけてきたスペシャリストでもあります。レザーの扱いで重視していることは?

 レザーの持つ柔らかさや硬さを見極め、官能性を引き立たせることを大事にしています。柔らかいレザーだけが出せる丸みや、硬い加工が生み出すパキッとした質感など、仕上がりをしっかりと考慮します。長年、革の特性に興味を持ち、研究してきたからこそ、このようなデザインができるのです。

——商品をデザインする際に、年齢や性別など特定のターゲットを意識しますか?

 いいえ。デッサンの時はジェンダーなどは考えず、一生使えるデザインかどうかを重視します。流行によって廃れることなく、製品そのものが生き続けられることが重要です。そのためには、彫刻を作るように、純粋性を追求することが必要です。ピュアネス、それこそが私の考えるラグジュアリーですね。

——色使いも一新されました。色彩についての考え方は?

 モンブランのカラーパレットは白と黒が中心ですが、アーカイヴを振り返ると、実は多くの色が使われてきたことがわかります。例えば、2024年春夏コレクションで取り入れたコーラルカラーは、アーカイヴの中から見つけました。色彩は、国や文化、女性性、男性性などを表現できますし、他の色があるからこそ、黒を際立たせることもできる。そして黒は、全ての色を合わせたカラーでもありますね。

——マルコさん自身も、いつも黒でシンプルな服装ですね。

 私はミニマリストなので、たくさんのものを必要としません。自分のためには、シンプルなものだけで十分。常に白紙のような状態でありたいのです。そうすることで、純粋な視点から人に何を伝えればいいのかを判断できます。

——2024年には「マイスターシュテュック」が100周年を迎えます。その記念として発売される特別なアイテムは、どのようにデザインしたのでしょうか?

 私たちの使命は、100年の歴史を持つペンの、更なる100年を守ることです。プロジェクト全体が、筆記具や時計といったものを、レザーを用いてもう100年守るというコンセプトに基づいています。それは私たちの魂を、身体で守るようなもの。バッグは「マイスターシュテュック」を守るためのスペースが中にあるという発想でデザインしています。

——プロダクトだけではなく、キャンペーンイメージも一新されました。「ライブラリー?スピリット」と題され、ミラノ、ロンドン、NY、上海と、世界各地の図書館で撮影されています。どのような狙いがあるのでしょうか?

 現代においてはコンピューターが普及し、手で文字を書く機会は減りつつあります。しかし、書くという行為は依然として素晴らしいことで、このキャンペーンシリーズでは図書館、そして本を通じてそれを表現しています。図書館はその都市や文化を映し出し、物語の再発見を促すひらめきの場所です。ロンドンでのキャンペーンは、何千人もの世界的な作家や思想家が関わってきた「ロンドン図書館」で撮り下ろし、多様なストーリーや文化、知識を象徴する本、そして言葉たちとの親密な時間を描くことで、書くことの偉大さを表しました。これからも、次なる100年に向けて、書くことの喜びを伝えていきたいですね。

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Interview & Text: Ko Ueoka
Photo: Koji Hirano
Edit: Chiemi Kominato (FASHIONSNAP)

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