流行やトレンドの潮流に左右されるファッション業界の中で定番と称され、多くの人に愛されているアイテムには底知れない魅力が詰まっています。そんなマイスタンダードに相応しい、オーセンティックかつエッセンシャルなアイテムをF/STOREの中から厳選して紹介します。
日常に寄り添うアーティザナル、ミスターイットの刺繍シャツ
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「メゾン マルジェラ（Maison Margiela）」で経験を積んだデザイナーが手掛ける「ミスターイット（mister it.）」。“身近なオートクチュール”をコンセプトに掲げ、前職時代に培った独創的なテクニックやエッセンスを日常使いできるアイテムへと落とし込んだコレクションで人気を博すブランドです。2020年春夏にはシャツにフォーカスしたラインナップを展開するなど、デザイナー自身のこだわりも強く、ブランドを表現する上で欠かすことができないアイテムであるシャツは、世界観を堪能でき、最初の一枚としておすすめしたい定番的な存在です。
2024年春夏の新作として登場した刺繍シャツは、ボーリングシャツをデザインソースにした一着。動きやすさを担保する背面のアクションプリーツや少し大きめにデザインされた襟など、モチーフ通りに設計されたディテールを取り入れながら、全体で見た時にはブランドらしいモダンなテイストにまとまっています。キュプラとレーヨンを混紡したとろみのある生地を活かすオーバーサイズのシルエットは、性別や体型問わず着る人の身体に馴染み、綺麗なドレープを描きます。一際目を惹くのは、フロントに入った繊細な刺繍。細かな運針で描かれた線は騙し絵のように、見る人の感性によって表情を変えます。抽象画のようにも、横たわる女性のようにも見える刺繍は、着こなしにさりげないアクセントを効かせる秀逸なデザインです。
不特定多数ではなく特定の個人に向けてアイテムを制作しているのも同ブランドの特徴の一つ。このシャツは「いつもセクシーでエレガンスな空気を放っている Sandie」のために作られたそう。アーティスティックなデザインアプローチを施しながらも“デザイナー自身の身近な人物に向けて作る”という前提が存在していることにより、どこか親近感を抱かせるリアルクローズへと昇華しています。特定の個人のために作るという点ではオートクチュールとも言えますが、気負わず日常使いでき、誰のワードローブにも馴染むのは、あくまでもリアルな人物像であり、誰一人として置き去りしないというデザイナーの姿勢が反映されているからこそ。日常に寄り添うアーティザナルの息遣いを感じさせる一枚は、ワードローブのスタンダードとして迎えたいアイテムです。
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