
ケンゾー 2026年春夏コレクション、藤原ヒロシとNIGO?
Image by: KENZO
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NIGO?にとって、藤原ヒロシは「師匠」と呼ぶ存在だ。NIGO?は今回、自身が手掛ける「ケンゾー(KENZO)」2026年春夏コレクションのショーで、藤原をサウンドトラックに起用。ケンゾーのスタジオで行ったNIGO?へのインタビューと、ショーに来場した藤原への取材から、2人の関係とともに世代や時代を超えるミックスの魅力を探る。
「ギリギリまで突き詰める」師匠から学んだこと
1990年前後、すでにカリスマ的な影響力を放っていた藤原と顔が似ていることから、「2号=NIGO?」と呼ばれるようになったのは有名な話だ。サンプリングとリミックスを日本に広めた藤原と、当時からよく遊んだり、藤原主催のイベントでDJのアシストをしていたとNIGO?は振り返る。
最近でも不定期に会っては、何か面白いことがあれば刺激を得る。そんな普段のやりとりの中で、藤原が作ったミックスをNIGO?にLINEで送ったことが、ショーのサウンドトラックに起用するきっかけになった。
「聴いたらグッときて。それをケンゾーのスタジオで見せたら『これいいね!』と皆が盛り上がって、ショーの音楽をお願いしたいとヒロシ君に頼んだんです。若い世代の人たちにも届くのはすごいなと」。
サウンドトラック制作のやり取りを通じて、NIGO?が改めて感銘を受けたのが「最後まで突き詰める」という藤原の姿勢だったという。「結構ギリギリまでミックスをアップデートしてくれて。普段自分もよくやることで、それって無意識に師匠を見て学んだんたんだな、と納得する部分がありました」。ミリ単位の違いまで真摯にこだわり続ける、NIGO?のスタイルのルーツを垣間見た。
異なる個性が生むパラドックス
そんなNIGO?のことを、藤原はどう見ているのか。「僕とNIGO?は結構ジェネレーションが違います。僕の時代はアンダーグラウンドだったけれど、彼は最初からビッグスケールで物事を考える。30年以上前からそうでした」。今や世界中のキーパーソンやコミュニティとつながりを持ち、それぞれ活躍している2人について、共通点よりも違いや個性を強調する。
「彼は几帳面だしアーキビスト。僕はそこまで引き出しが多いわけではないから、彼がそれを大きく世界でやっているのはすごいことじゃないですか」。そんな2人がともに仕事をする姿は近年では見ることがなかったが、「NIGO?に頼まれたから」引き受けたとクールに話す。「昔よくNIGO?がかけていた曲とか、時代とジャンルを関係なく混ぜているので、面白いと思います」。サウンドトラックは、1990年から現代まで縦断する、古くて新しいパラドックス的なミックスに仕上がった。
※実際にショーで流れた音楽と、アーカイヴのショー映像の音楽は別で制作された(ともに制作は藤原ヒロシ)。前者はショーの招待客だけが聴くことができる、一夜限りのミックスとなった。
ケンゾーに吹くパンクな新風
2026年春夏コレクションにも、ジェネレーションミックスの精神が貫かれている。布石となったのは、前回3月に発表されたウィメンズ単独の2025年秋冬コレクションだ。イメージムービーとして1960?70年代調のアニメーションが制作され、招待状はウサギのぬいぐるみ。コレクションにはマニッシュなタキシードブレザーとコケティッシュなランジェリーを合わせるなど、レトロなアイデアと遊び心がふんだんに取り入れられた。
新たなケンゾーについて「自分の中のひとつの箱を開けた」と表現したNIGO?。膨大なアーカイヴコレクションを所有しているNIGO?の言う「箱」とは、幅広い年代とさまざまな文化が詰め込まれた、いわば知識とアイデアの宝庫。その中から、あえてこれまでタッチしてこなかったという「パンク」の蓋が開いた。「みんな好きですよね。自分ではあえて表立っては触れてこなかったパンクカルチャーを取り入れて、そこに"楽しさ"を入れていきました」。
NIGO?の手掛けるケンゾーの初期は、ビジネスを意識しながら、畑を耕し種をまくようにクリエイションを高めてきた。ファーストコレクションから3年が経ちマンネリ化しがちな時期に、デザインスタジオのヘッドとして迎えたのがJoshua A. Bullen(以下、ジョシュア)。新体制を整えると同時に、より大胆で自由なクリエイションが可能になったという。
「いい感じに攻めていける状態になっています。デザインチームが変わって、考え方も違う感じになるのは嫌いじゃない。新しいことを掘っていって、また挑戦することができるので」。
60?70年代にミックスする"あの頃"
新生チームによる新たなアプローチのひとつが、カルチャーとジェネレーションのミックス。今シーズンは1960?70年代のケンゾー初期のアトリエと、ニューヨークのアンテ?ィ?ウォーホルの伝説的なスタジオ「The Factory」のムードを、文化的につなげていったという。
NIGO?は「あの時代が熱いんです」と、壁にディスプレイされたウォーホル撮影によるカール?ラガーフェルドのポートレイトを指差した。1972年に撮影され、「インタビュー」マガジンの表紙になった一枚だ。(奇しくも、今シーズン「ディオール」でファーストコレクションを発表したジョナサン?アンダーソンも、1970年代にウォーホルが撮影したポートレートをムードボードに掲げている)
そこに、ジョシュアがふりかけるスパイスは、NIGO?にとって懐かしくもありながら「自分では否定している自分らしさかもしれない」とする、1990?2000年代のテイスト。NIGO?が立ち上げた「ア ベイシング エイプ?(A BATHING APE?)」がストリートを席巻していた時代だが、「自分としては恥ずかしい」と笑う。「今の若い世代にとって、あの時代は強烈みたいですね。ムチャクチャやっていたあの頃があったおかげで、今があるとも言えるのかな」。
「My Way」自分らしく
ショー会場となったのは、パリを象徴する社交場であり歴史ある名店「マキシム」。今にもパーティーが始まりそうな店内を、ストリートに精通した"Kenzo Guy"と、無邪気な"Kenzo Girl"たちが練り歩く。



















アーカイヴのシルエットとモチーフを再解釈しながら、テーラードはパンクな色彩をまとい、カレッジとアイビースタイルをコラージュしたスタイルも。一部のアイテムはモテ?ル自身か?マーカーを使ってカスタマイス?するなど、DIY要素を取り入れている。












創業者の髙田賢三が着用していたシャフシャツにはバラのプリントが施され、プラットフォームのボーリングシューズ、先シーズンから続くウサギの物語のキャラクターたち(新たにトラと、トラ柄のウサギが仲間入り)、そして「New Era」とのコラホ?レーションによる2シーズン目の「59FIFTY」キャップ──大胆なミックスと遊びの要素がふんだんに注入された。




ショーのフィナーレで、客席に座る師匠と握手を交わしたNIGO?。会場に流れていたのは、フランク?シナトラの名曲「My Way」だった。「I did it my way(自分のやり方でやり遂げた)」という歌詞が、それぞれの道を貫いてきた2人の哲学と響き合う。「自分らしく生きる」ことの普遍的なメッセージがコレクションと重なり、拍手の中でショーの幕が降りた。

藤原ヒロシとNIGO?
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