人気美容師の過去と今をひも解く連載第14回。今回フォーカスするのは、SHIMAの第一線で長く活躍した後、東京?中目黒にトータルビューティサロンRUMIKAを立ち上げた金子瑠美さん。独立から2年経った今だからこそ聞きたい、現在地に至るまでを振り返ります。
#14 金子瑠美 かねこるみ
インスタグラム
5月18日生まれ。熊本県出身。大村美容専門学校卒業後、SHIMAに入社。多くの雑誌掲載やヘアショーをこなしながら、店長としても活躍。17年間の勤務を終え、2021年に東京?中目黒にRUMIKAを立ち上げる。ポイントを抑えたカウンセリングでニーズをキャッチし、その人自身に似合わせるカットが評判。確かな技術とセンスで30代女性を中心に支持を集めている。
【店舗プロフィール】
RUMIKA ルミカ
ヘア、ボディ、フェイシャル、インナーケアを提案するトータルビューティサロン。技術力抜群のヘアスタイリストとセラピストが在籍。店内での施術はもちろん、セルフケアのワークショップを開催するなど、あらゆるアプローチから女性の綺麗を支える。アンティーク家具に囲まれた店内は、細部までこだわりが詰まった空間となっている。オーガニック商品やオリジナルブレンドのハーブティーなども販売中。
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ー美容師になった理由を教えてください。
高校はスポーツ強豪校に通い、卒業後もスポーツを続けていこうかと思っていた時、偶然目に入った美容学校のパンフレットが美容師を志すきっかけとなりました。たまたま先輩が取り寄せていたそのパンフレットを見て、髪を触ることやかわいいものが好きだったことをふっと思い出したんですよね。親にも先生にも猛反対されたのですが、その時に美容師を目指そうと決めました。
ーその後は地元の福岡の美容学校へ進学を?
はい、1年生の時は初めて自由な時間か?て?きた反動て?たくさん遊んて?いました。先生にも「本当に美容師になりたいの?」と言われるくらい(笑)。て?も、2年生の時に出会った同級生に大きく影響され、東京て?美容師になりたいという気持ちか?芽生えていきます。
ーなぜ東京だったんですか?
当初は地元?九州で美容師になろうと考えていたのですが、その人と一緒にサロン見学に行った時に見た、東京の美容室の規模感や最先端のファッションに魅了されてしまって…。親にも反対されましたが、東京に通うたび上京の思いは強くなっていきました。
ー実際に就職はどのようにされたのでしょうか?
2回目の上京で、SHIMA青山店へサロン見学に行きました。その時に目の当たりにした、流行最先端のヘアやスタッフの方の個性的なファッションに強く影響を受けて、ここで働きたいと決め、SHIMA1本に絞って就職活動しました。ヘアショーや雑誌の撮影など、サロンワーク以外の活動をしたかったというのも大きな志望動機です。
ー無事に合格し、入社して丸17年間、SHIMAの第一線で活躍し続けた金子さん。振り返ってみていかがでしょう?
SHIMAはやってみたいと思う「夢のようなステージ」を準備してくれる場所でした。撮影やヘアショーなど、がんばればその人次第で叶えられる、そういう環境を整えていただいたおかげで、自分がやってみたいと思い描いてきたことはすべて17年間のうちに達成できたと思います。
SHIMA時代に出場したヘアショー
ー「がんばれば叶う」としても、ヘアショーや撮影などに選ばれるためには努力も必要と思います。特別意識していたことはありますか?
当時はSNSがなかったので雑誌をたくさん読み、インプットをするようにしていました。あとは、自分がなりたいと思う先輩にたくさん話を聞いていましたね。ゴールに近づくためにはブレた方向に進んでも結果は出ないと思っていたので、「どうすればもっとよくなりますか?」などと、かなりコンタクトを取っていました。
ー先輩にかけてもらって印象に残っている言葉は?
あまりネガティブになるタイプではないのですが、ヘアショーの練習期間中に「これはできないかも」と初めてお店で泣いてしまったことがあって。そのときある先輩に「金子にできないことなんかあんのか?」と言ってもらえたことは今でも覚えています。「先輩がそう思ってくれているんだったら...!」とかなり勇気になりました。
SHIMA時代の仲間たちと
ーSHIMAを退社し、2021年にRUMIKAをオープン。長く働いた場所を離れ、次のステージに進もうと思ったきっかけは?
主に2つの理由があります。ひとつ目は、店長をやらせていただいた経験から、人を育てることの楽しさを知っていったことです。元々は1年目の子にも嫉妬するくらい、ものすごく負けず嫌いだったのですが、経験を重ねるにつれ、だんだん教えている後輩の成長がすごく楽しくなっていったんです。
ー自分よりも人の成長のほうが楽しいと思うようになったのはなぜでしょう?
美容師は、成長がすごくわかりやすい職業だと思うんです。アシスタントがお客さまに名前を呼んでいただけるようになったり、お客さまからカラーを任せていただけるようになったり...。1つひとつのステップアップが目に見えるので楽しさを実感しやすかったのかもしれません。SHIMAが私を育ててくれたように、自分も上に立って、人を育て、本当の意味で雇ったスタッフたちを成長させていきたい。そういう思いも独立しようと思った理由の1つですね。
RUMIKAの外観。アンティーク調の内装を想定していたため、古くなりすぎないようにあえてスタイリッシュな外観を選んだ。
ーもうひとつの独立のきっかけは?
もう1つの理由は、お客さま一人ひとりを癒やすことができる空間を作りたいと思ったからです。私自身、長く働いてきた中でケアの大切さを実感してきました。
たとえば昔、深夜までヘアショーの練習をし、寝不足で朝サロンワークに向かうという生活をしていたことがあります。正直、体力的にもしんどいなと感じていてもやらなければいけない…。実際、休みの日に自分のメンテナンスにもすごく時間がかかっていて、もっと自分を正しくケアできていればお客さまにより良いパフォーマンスを提供できていたかもしれないと思うこともありました。
ーケアの大切さを実感してきたことが、トータルビューティサロンであるRUMIKA創立に深くつながっているのですね。
大人になるにつれて体力も落ちていく中、女性がいつまでも綺麗でベストな状態でいるためにはボディやフェイシャル、インナーケアまでをも含めたトータルのサポートが必要なのではないか。それを提供できる場所があればいいなと思ったのがRUMIKA立ち上げの理由の1つです。RUMIKAにはセラピストによる施術を受けられるスパルームも併設しています。ほかにも、内側からいたわるオリジナルブレンドのハーブティーの販売や、セルフケアのワークショップ開催など、女性の皆さんの綺麗を支える空間作りを心掛けています。
ーワークショップ開催やオリジナルハーブティーの開発など、ある意味従来の美容室らしくないようにも感じます。これらは元々構想していたことなのでしょうか?
そうですね。というか、やってみたいことがすぐできる環境になったというのが大きいかもしれません。あとはお客さまとの距離がより近くなって求められていることが理解しやすくなったという側面もあって...。
ーというと?
実はずっと同じペースで予約を埋めるようにしているんです。土日祝日にぎゅっと忙しくするのではなく、常に一定のリズムでパフォーマンスを提供できるようにしっかり予約管理をしています。
リラックスするためにも花をよく自宅に飾る。
ーこれは以前と働き方が変わったところ?
そのシステムが悪いというわけではないのですが、予約を詰め込む管理法はお客さまに負担になる部分はあるなと思っていました。同じ時間にたくさんのお客さまを抱え、カット以外は十分に携われないまま風のように去っていく...。当時は忙しすぎてあまりお話できなかったお客さまとも、RUMIKAになってからゆっくりお話できるようになったという変化もあります。今後もこういうスタイルでやっていきたいです。
ー今年RUMIKAは3年目を迎えます。オープン当初を振り返って、大変だったことは?
「大変なことって何だったんだろう?」と思うくらい、楽しい2年間でした。もちろんタイトスケジュールではあったのですが、やりたいことを具現化していくのが楽しかった。今一緒に働いている4人のスタッフは、本当に真面目で頑張り屋さんばかりなので、彼女たちにすごく助けられているというのも大きいですね。ありがたいことに皆が同じ方向を向いてくれている実感があります。
SHIMA時代の先輩、佐藤友美さんと。今はRUMIKAで一緒に働く大切な仲間。
ー独立の理由のひとつだった“人の成長を見守る楽しさ”も感じられていますか?
1から始めた2人のアシスタントたちは、スポンジのように何でも吸収してくれるので、日々成長を実感しています。今は6席しかないのですが、アシスタントがデビューしたとき、お客さまがたくさん来てくださるというイメージを持ってもらいたいので、ゆくゆくはお店を増やしていきたいと思っています。アシスタントたちのデビュー後、またその子たちが新しいアシスタントを雇い育てていくー。人を育てていくということは、こうやって次世代の未来につながっていくことなのかなと考えています。
ー最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
どんな環境にいても、結局は自分次第だと思っています。「このお店にいるからできない」「このエリアにいるからできない」などと結果が出ないうちは環境のせいにしがちですが、目標を強く持って行動することが大事です。強い気持ちを持っていれば、きっと周りの人も良い影響を受けて、結果的に目標へ近づいていけるはずです。皆さんの成功を応援しています。
(写真:金子瑠美、企画:福崎明子)
編集者、ライター
出版社2社を経て独立。書籍の企画?編集、ブックライティング、記事等のインタビューなど活動中。ペンギンが好き。「now&then」の聞き手、文を担当する。
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