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誰でもパリコレに参加できる「La WATCHPARTY」とは? 影響力を探る

Lyasと「La WATCHPARTY」会場

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Image by: ?Launchmetrics Spotlight / FASHIONSNAP

Lyasと「La WATCHPARTY」会場

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誰でもパリコレに参加できる「La WATCHPARTY」とは? 影響力を探る

Lyasと「La WATCHPARTY」会場

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 かつてファッションショーは、招待状を手にした限られた人だけが見ることができた。2010年頃から各ブランドがライブ配信を取り入れるようになり、今ではオンラインを通じてリアルタイムに誰でもランウェイの様子を見ることができる。この民主化をさらに一歩進め、既存の構造を軽やかにひっくり返したのが、フランス人コンテンツクリエイター Lyasだ。彼の発案で始まり、パリの街中で数千人、オンラインでは総計3400万の視聴数を集めたというファッションショーライブ「La WATCHPARTY」とは何だったのか?

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Lyasとは?
1999年フランス出身のコンテンツクリエイター兼ファッション解説者。InstagramやTikTokで50万人以上のフォロワーを抱え、SNS上で大きな影響力を持っている。鋭いファッション批評と親しみやすい語り口、そして包摂的な視点で知られ、ファッション界において注目される存在。

Image by: ?Launchmetrics Spotlight

ディオールのショーの出席叶わず

 始まりは、今年6月の「ディオール(Dior)」メンズコレクションのショー前日。ジョナサン?アンダーソンによる注目のデビューコレクションが席数を絞ったショー形式で開催されたため、出席が叶わなかったLyasが失望の声を発信した。それと同時に行った、フォロワーへの呼びかけが発端となった。

 それは、ディオールのショーのライブ配信をみんなで見よう、というもの。「Dior watch party」の情報はファッションラバーらに伝わり、6月27日のショー当日、パリ10区の小さなバーに300人以上が集まった。近隣の店も巻き込んで椅子をかき集めても足りず、道路まで人があふれるほど。

 参加者らは、ショーの映像を和気あいあいと語り合いながら鑑賞。この光景を撮影した動画はSNSで瞬く間に拡散され、FASHIONSNAPのInstagram投稿にも多くの反響があった。

 後日談として、ジョナサン?アンダーソンからLyasに、ウォッチパーティーを開いてくれたお礼として、ディオールの新作ブックトートが贈られている。

 手応えを得たLyasは、プロジェクトを本格的に始動。9月17日、「wE’re backkkkkkkk」の投稿とともに、「La WATCHPARTY」の開催を宣言した。単なる"配信を見る場"ではなく、ファッションを共に体験する、新しいコミュニティの場に発展させたのが今シーズンだ。さらに、La WATCHPARTYは海を渡り、ロンドン、ミラノ、パリで開催されることになった。

誰もが参加できる、開かれたパリコレに

 3都市の中でも最大規模となったのは、発祥の地であるパリ。会場が大幅に拡大し、パリ10区に位置する「ラ?カゼルヌ」の、約1000人を収容できる屋外スペースが舞台となった。9月29日から10月6日までの8日間、毎日1?2ブランドのショーをライブ配信映像を放映。トップメゾンの最新コレクションが公開された。

 ライブ映像は巨大な"ラップトップ型スクリーン"に投影され、開演前後には来場者が楽しめるようなゲームや、プリントTシャツなど限定グッズの販売も。

 特筆すべきは、プロジェクトに協賛が入ったこと。イギリスファッション協議会をはじめ、Meta、Whoopsee、Vestiaire Collectiveといった企業が、La WATCHPARTYの公式スポンサーに名を連ねた。パリのメインスポンサーはMAC Cosmetics。そしてLyas自身が、コミュニティへの貢献のために費用の約3分の1を賄っている点にも注目したい。

 入場には事前予約やチケットは不要で、パリでの唯一の参加条件は「赤い口紅をつけてくること」。これはLyasのトレードマークである赤リップに由来しており、スポンサーのMACによるリップスティックのインスタレーションも実施された。

 さらに、パリの有力PRエージェンシー「Lucien Pages」が協力。ランウェイチケットが当たるクイズ企画では、15歳の服飾学生が難題をクリアし、その場でバイクタクシーに飛び乗って実際のショー会場へ向かうという一幕もあった。

Video by FASHIONSNAP

 観客による採点システムなど参加型の仕掛けも導入され、会場の盛り上がりは音楽フェスやスポーツ観戦さながら。スクリーンにショーが映し出されると拍手が起こり、人気モデルや美しいランウェイルックが登場するたびに歓声が響いた。従来の静かなファッションショーとは異なる、熱気に満ちた空間がそこにあった。

「あらゆる障壁を取り除きたい」

 来場者の中心は、10代後半から20代のZ世代。全体の年齢層は幅広く、世代を超えて同じ空間を共有していた。日本からパリに訪れていた服飾学生といった海外からの来場者も多く、La WATCHPARTYが"もうひとつのパリコレ"としてインクルーシブなイベントに発展。ドレスコードである"赤リップ"も、会場全体の一体感を高めるシンボルとして機能していた。

 何より印象を残したのは、集まった多くの来場者の熱量の高さ。上映開始の1時間前には長蛇の列ができ、入場規制がかかる回もあったようだ。場外に人があふれるほどの盛況ぶりだった。

I want to remove every barriers for guests, I’d rather people just walk in and feel part of it. (ゲストにとってのあらゆる障壁を取り除きたい。ただ、ふらりと入ってきて、その一部だと感じてほしい)──Lyas

 1人のクリエイターの失望が発端となった呼びかけが、街を巻き込み、企業を巻き込み、そして若いファッションラバーたちに届いた。誰でも無料で参加でき、体験し、観客自身が主役になれる。高級化と価格高騰がさらに進む中、排他的になりつつあるモード界で、ファッションはショーの最前列の人だけのものではないことをLyasと多様な参加者たちが示してくれた。オフランウェイで起こったムーブメントが、ファッションウィークの新時代を築きそうだ。

最終更新日:

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