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更新続ける「セッチュウ(SETCHU)」、目指したのは合理性から距離を置くこと

ミラノで2026年春夏コレクションを発表

SETCHU 2026年春夏コレクション

Image by: ?Launchmetrics Spotlight

SETCHU 2026年春夏コレクション

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更新続ける「セッチュウ(SETCHU)」、目指したのは合理性から距離を置くこと

ミラノで2026年春夏コレクションを発表

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 桑田悟史が手掛ける「セッチュウ(SETCHU)」の輝きは、単なる“和と洋の折衷”という枠を超え、服飾における思考と身体の関係性を根底から問い直す点にある。折り紙から着想を得た"折る"などの原初的な所作を、ビスポークで培った立体裁断の世界へと誘い、唯一無二のクリエイションを続けている。日本的平面性と西洋的立体性を融合させるテクニックは世界で認められ、今回初めてミラノファッションウィークでショーを開催するに至った。

 セッチュウの2026年春夏コレクションは、ブランド誕生から貫かれてきた「東西融合」の感性をさらに押し広げ、南方、アフリカに着目。コレクションタイトルは「CHASING RAINBOWS BY THE HOUR」。合理性から一歩離れ、より生命力に溢れプリミティブな力にフォーカスを移しながら、これまでの東西の対話から新たに南へと視野を広げたという。

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 今季の原点は、桑田がジンバブエのヴィクトリアフォールを訪れた旅と、LVMH Métiers d’Artとの協働プロジェクトにある。現地では、女性や若者の自立を支援するJAFUTA FoundationとBatoka Creativesと連携し、地域固有のクラフトマンシップにフォーカスした。桑田は部族の職人たちとともに椰子で編み物を制作し、大自然に身を委ねながら、釣り人の憧れであるタイガーフィッシュを釣り上げるという稀有な体験も得たという。

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 滝を包む霧と虹の幻想的な光景、そして「巻きつける」という原初的な着装行為、そうした観察が2026年春夏コレクションの軸となった。服の形やサイズに縛られず、身体そのものに服を委ねる歴史が日本とアフリカという異なる文化圏を結びつけ、新たな表現へと昇華されている。

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 コレクションは、衣服という枠組みを自在に解体し、再構築する試みに満ちている。シャツやTシャツはジッパーやボタンを解放すれば布となり、身体に巻きつけるストールへと転じる。ガーメントケースは優雅なワンピースへと姿を変え、デニムやカーゴは、たっぷりとした生地量で設計された。さらにサファリジャケットの襟元にはハンドルが潜み、畳めば大ぶりのトートバッグのように携行できる。

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 意匠はスポーツ、ミリタリー、ワークウェアの各文脈を縦横に交差させる。ジム用のボクサーショーツが現代性を添え、袴パンツやピークドラペルのブレザーが和洋の対話を深める。そして、ヴィクトリアフォールを包む霧から着想を得た透光性のテキスタイルが、流麗なドレスやテーラリングにまで及び、軽やかな空気感をまとわせる。また、釣り好きの桑田らしく、魚のモチーフは今シーズンも健在だ。

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 多層的アプローチは、性差をはじめとするあらゆる境界を曖昧にし、異質な要素同士を調和へと導くが、これまでサヴィルロウでの経験をもとに"意味のある"ものづくりが特徴だったセッチュウは、なぜ「合理性から距離をとること」を選んだのか。更新のためか、新たな志向が生まれたのか、ミニマリズムや機能性が謳われて久しいファッションシーンにおいて、セッチュウはあえて“手間”や“予測不能性”を受け入れる。服のどこに腕を通すか、どう結ぶか。着る人自身が毎回小さな発見を重ねる行為が、原初的な「装う喜び」を呼び覚ますと考えたのではないだろうか。これは、アフリカ現地のクラフトマンが手を動かし、素材と対話しながら形を決めるプロセスと同じとも言える。


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 桑田が示したのは、文化やジェンダー、機能と装飾、服と小物といった境界線を“霧”で包みこみ、新たな地平へ向けて溶かす試みだ。その先に立ち現れるのは、変化を抱き込みながら前進する、人間そのものの生命力である。

桑田悟史

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2026 SPRING SUMMERファッションショー

FASHIONSNAP ディレクター

芳之内史也

Fumiya Yoshinouchi

1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、レコオーランドに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。国内若手デザイナーの発掘と育成をメディアのスタンスから行っている。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2023年までASIA FASHION COLLECTIONの審査員を務める。

最終更新日:

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