Image by: ?Launchmetrics Spotlight

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長期間の定住型狩猟採集社会が続いた縄文時代。人々は土器の発明によって食生活を劇的に進化させ、自然のサイクルと調和した独自の生活様式を確立させた。土器に施された燃え上がる炎を模った火焔型文様や、うねるような曲線美、五穀豊穣への祈りを込めた土偶の造形は、過酷な自然を生き抜く当時の人々の生命力と、溢れ出るエネルギーの結晶だったと言われている。
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「ターク(TAAKK)」の2026年秋冬コレクションでは、そんな縄文時代に確立された“縄文模様”をインスピレーション源に採用。遥か太古の日本人のクラフツマンシップと、現代の衣服の間に生まれる調和をデザインとして結実させた。
ファーストルックで登場したのは、今季のテーマを象徴するような、土の温もりを感じさせるベージュのロングコート。両袖と身頃には、ブランドのお家芸でもあるテープ状の素材を直接縫い付けて模様を作る刺繍技法「テープ刺繍」によって縄文模様を連想させる曲線が描かれ、まるで縄文土器が服として生まれ変わったような存在感を放っている。インナーで取り入れられたミントグリーンのニットは、新たな生命の息吹を思わせ、バッグで取り入れられた深みのあるレッドは、厳しい狩猟生活の中で流される血を想起させる。

続いて登場したルックは、前述のコートよりも更に深みを増したブラウンのセットアップ。ジャケットの前面から袖にかけて広がる刺繍は線が細かく、ファーストルックの刺繍は植物などの自然を想起させるのに対し、こちらの刺繍はより人工的でエスニックライク。規則性と不規則性が同居するステッチは、縄文模様だけでなく、皮膚に傷をつけた際に形成される「瘢痕」を利用してデザインを描くアフリカの身体装飾 スカリフィケーションからもインスピレーションを受けたという。襟元に覗く同色のシャツの意匠は、さながら縄でしつらえたネックレスのようだ。

ブランドとしてほぼ初めて製作したというレザーアイテムも、重要なキーピースとなって今季のコレクションを支えた。レザーアイテムはブルゾン2型、シャツ1型、パンツ1型、バッグ2型を製作。森川は自ら日本有数の皮革産地 姫路?たつのに赴き、いくつものタンナーを巡ってテーマに合う質感の素材を厳選。試行錯誤を重ね、レザーにテープ刺繍を施すというテクニックを成立させた。これにより野性味を帯びた生命の躍動をより鮮烈に表現したほか、縄文時代から自然界に存在していたレザーという素材に刺繍を施すことで、コレクション全体に説得力を加えている。



モデルの手元を彩ったジュエリーも見逃せない。これまでコラボレーションをしてこなかったタークだが、今回ブランドとして初めて協業を実施。相手に選んだのは、ジュエリーブランドの「4℃」だ。形を整えていない、ありのままの状態の天然石を4℃が持つ独自技術でシルバーと癒着させた逸品はダイナミックでプリミティブな力強さを放ち、自然界の霊性を指先にまとうような、アニミズム的な祈りにも見えた。


日本の美意識として世界に広く浸透している「侘び寂び」の美学。これはファッションの世界においても例外ではなく、活躍する日本人デザイナーの中には静謐なミニマリズムを強みとして世界と戦っている者も多い。しかし、日本人の根底に流れる美学はそれだけではない。生命の根源に根ざした、野性味あふれる力強さもまた、日本人の血脈に刻まれたDNAだ。森川は、今回のコレクションを通じて我々の中に眠る「もう一つの日本」を描き出し、世界に向けて発信した。
もちろん、同コレクションは日本で古来栄えた縄文時代をテーマとしているが、日本人だけに向けたものではない。洋服という西洋が生んだ文化を基盤としながら、アフリカのスカリフィケーションも着想源として、地続きに接続させている。森川が「原始的な衝動芸術を調べると、どの国の文化にも通じるものがあった」と語るように、自らの存在を何かに刻みつけようとする人間の「表現への渇望」には、時代や国境を超えた普遍的な共通点があるのかもしれない。自然の猛威を前に立ちすくむのではなく、自らの手で文様を刻み、「生」を装飾に変えてきた人類の歩み。その果てしない時間の積層を現代の衣服として提案したタークの2026年秋冬コレクションは、壮大な人間讃歌としてファッションの聖地 パリに響いた。
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