デザイナー森川拓野が手掛ける「ターク(TAAKK)」のクリエイションの根底には、ひたむきな素材への探究心がある。パリファッションウィークで発表した2026年春夏コレクションは、まさにブランドが長年追求してきた“素材”を活かした「フルコース」と言えるものだった。
「腕の良い料理人が食材から自身の手でこだわって作り込もうとするように、デザイナーが素材作りに傾倒するのは当然のこと」。森川がそう話す通り、タークのものづくりは、生地や素材の開発から始まる。アートピースのような独創的なテキスタイルは、シンプルな構造の日常着に新しい視点を与え、素材や加工に対する研鑽は、既存の素材や技術の固定観念を解き放ち新しいデザインへと発展させる。今シーズンのテーマとして掲げる「アートピースと日常着の境界」は、「タークにとってのベーシック」とも言い換えられる。
ADVERTISING

Image by: TAAKK
「僕からしたら当たり前になっている仕事をひたすらしよう」。そのような考え方から始まった今シーズンは、これまで開発してきたさまざまなテクニックを進化させながら新しい表現を模索。タークの定番である2つの生地がグラデーションのように切り替わる「グラデーションファブリック」では、「シャツからスーツへ」「スーツからシャツへ」という素材とアイテムを横断した変化にフォーカス。無地のブロードがピンストライプのスーツ生地へ、多様なジャケット生地はシャツ生地へ、単なる色の移ろいを超えたテキスタイルの用途や機能までも溶け合わせるグラデーションは錯視的な効果をもたらし、本来レイヤードされるシャツとジャケットという2つのアイテムの関係性を揺るがす、新しい服の可能性を示した。

Image by: TAAKK

Image by: TAAKK
過去数シーズンにわたって展開してきた、リボン状にした同素材の生地を縫い付けレリーフのように表現する刺繍技術は、フリルのように細かく折り合わせて立ち上げることで、表面的な装飾としてではなく服に立体感をもたらす“彫刻”として機能。透けるホワイトのテキスタイルは、オパール加工の上からさらに顔料と発泡プリントを重ねることでレース柄の繊細なディテールを浮き立たせた。職人が一点ずつ手作業で施す表面のスプレー加工がレザーのような風合いを実現するスウェットパンツからは、初のハーフパンツが登場。過去のコレクションに登場したさまざまなテクニックの発展は、服の造形そのものに対して新しいバランス感を生む。

Image by: TAAKK

Image by: TAAKK

Image by: TAAKK
ブランドにとっての当たり前に立ち返った今回のコレクションだが、その姿勢はこれまでのコレクションで目指してきたものとは一味違っている。「常に新しいことをしたいと考えていても、そのために捨ててきたものが勿体無くも思えた」(森川)。無から新しいものを生み出そうとするのではなく、ベーシックを追求することで発見される新しさは、ブランドのオリジナリティを強固にする。コレクションごとに切り分けられ独立した「アラカルト」ではなく、これまでブランドが積み重ねてきたものをすべて活かして紡ぐ「フルコース」を目指した。それは過去に「デザインとは積み重ねる仕事」だと語った職人気質なデザイナーのアティテュードそのものだ。
最終更新日:
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【注目コレクション】の過去記事
RELATED ARTICLE
関連記事
足球即时比分,比分直播
アクセスランキング

【2025年下半期占い】12星座別「日曜日22時占い」特別編