ヨウジヤマモト2025年春夏コレクション
Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
9月27日、冷たい雨の降る金曜の夜。「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」は2025年春夏ウィメンズコレクションをパリで発表した。会場は、これまでと同じくパリ市庁舎(H?tel de Ville)。
シベリア出身のピアニスト、パヴェル?コレスニコフ(Pavel Kolesnikov)がランウェイの脇にあるピアノのスツールに座り、鍵盤を弾き始めた。コレクションのオープニングを飾ったのは、日本人モデルのKUYURI。ヨウジヤマモトのショーに14回出演しており、ブランドのミューズの一人でもある。彼女は、黒いシースルー生地で、複雑なパターンワークのドレスをまとい、そこから真っ赤なテープが長く垂れ下がっていた。ハンドペインティングがなされたタイツも印象的だ。
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様々な素材や手法を織り交ぜながら、スポンティニアスな感覚を帯びた、アシンメトリーなドレスを打ち出していく。三角形や四角形の布を鎖のようにつなぎ、大胆で巨大な結び目は荒々しくも魅力的なドレープを作り出す。部分的なプリーツや文様にカットアウトされた生地、肋骨のようなベルトやラフなステッチによる縫合、繊細なレースやエンブロイダリーもある。複雑さと軽やかさを併せ持ちながら、フィニッシュで"綺麗"にさせすぎることなく、無造作で、混沌とした状態のままで表現される。そこに見えるのは、子どものような無邪気さだ。
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今シーズンの特徴として、レースが巧みに用いられた。ハットから片側だけヴェールのように垂らして肌を美しく透けて見せ、またドレスの端で軽やかに揺れることで、複雑な構造の最終的な印象を軽やかに仕上げている。
38体の黒い服の連続は、いかにもヨウジヤマモトらしい展開だったが、最後の5ルックは堰を切ったように、真紅のドレスが登場した。黒の服に比べるとシンプルな構造とカッティングで、その静かなエレガンスが漂う様は、まさにマスタークラスと呼ぶにふさわしいものだった。
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パヴェル?コレスニコフのパフォーマンスでは、バッハ(Bach)やクリストフ?ヴィリバルト?グルック(Christoph Willibald Gluck)といった巨匠の曲と並んで、イルカの「なごり雪」、石川さゆりの「津軽海峡冬景色」など、日本人なら馴染み深い歌謡曲がピアノアレンジで演奏された。フランス流の豪華絢爛さが凝縮されたH?tel de Villeの暗く重厚な空間では、その文化的コントラストが独特の雰囲気を醸し出す。フィナーレが近づくとピアノの音は止み、スピーカーからレナード?コーエン(Leonard Cohen)の「You Want It Darker」が流れ始めるが、これはもちろん山本耀司によるカバーだ。
無論、真剣勝負の場ではあるが、「ヨウジ ヤマモト」のショーは喜劇的でもある。シリアスでありながら、どこかユーモアもある。「人生はクローズアップで見れば悲劇、ロングショットで見れば喜劇」という、チャールズ?チャップリン(Charles Spencer Chaplin)の言葉を思い出す。アウトサイダーとして生き続けてきた山本耀司は、その人生の深みと味わいをコレクションに反映しているようだ。
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