Image by: (中央写真)ELISE TOIDE
10月2日。「ヨウジヤマモト(Yohji?Yamamoto)」が、2021年春夏ウィメンズコレクションをパリで発表。日本ブランドで唯一、パリファッションウィーク期間中にこれまで通り観客を入れたランウェイショーを行った。現地パリからレポートする。
(取材?文?岡本真実)
この日、昼間は嵐のような雨。フランスではコロナの新規感染者が1日1万人を超えており、また不安定な天気のせいもあって、会場となったパリ4区のマレ地区は、比較的人が少なく静かな印象だ。
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スタートの30分前に現地入りすると、会場前にはパパラッチが20~30人ほど。黒い服に身を包んだ人が多いので、遠目に見て華やかという感じではないが、意外と人が多く感じた。
普段なら日本やアジアからの来場客が目立つが、今シーズンはほとんどいない。在パリ、もしくは在ヨーロッパのジャーナリストが数名と、やはり在パリのデザイナー、ファッション関係者などの姿も見かけた。今回のショーは、欧州内からの招待客が多いようだ。
会場の中へ入る時に、黒いマスクを2枚手渡された。1枚は市販の黒い不織布マスク、1枚は、ヨウジヤマモトのロゴの入ったオリジナルのウレタンマスク。もちろん色はブラックだ。
普段よりも厳重なセキュリティチェックの後、手をアルコール消毒するよう促され、いざ会場の中へ。観客の多くは渡された黒いマスクに付け替えていた。自分もそれに倣うと、会場内に一体感が生まれたように感じる。
ショー会場は、パリ市庁舎のサロン。パリでも有名な、歴史的建造物だ。館内は、壮麗なルネサンス様式のインテリアが印象的。バカラクリスタルのシャンデリアがずらりと並ぶ、ベルサイユ宮殿を彷彿させる豪華な装飾。そんなインテリアに、ブランドロゴの入った黒のサインが際立って見える。
客席は、間隔を開けるためひと席ごとに「No?seat」の印が。観客同士がちょうど1メートルくらい離れる距離で、フランスのソーシャルディスタンスが保てるようになっている。
観客数はざっと200人ほどだろうか。スタンディングは無く、全員がシーティング。観客数は普段のコレクションの半分か、3分の1という感じだろう。
ショーが始まる。アコースティックギターの静かな音楽に乗せて、まずは白と黒のバイカラーのドレスのシリーズ。その後、黒のロングドレスや、ソフトな印象のテーラードのルックが続く。
今シーズンもブラックを軸にしたカラーパレット。続く音楽も、おなじみの山本耀司さん本人の歌声に変わる。徐々に植物や花のように有機的なパーツが絡み合い、複雑な立体のフォルムを形成していく。クリノリンの針金が剥き出しになっていたり、生命の一瞬を切り取ったような印象的なコレクション。緑色の招待状に、ボタニカルのモチーフが描かれていたことに合点がいった。
最後はオールホワイトの4体。よく見ると、葉や花弁のようにうねるパーツには薄いグレーやベージュが刷毛で塗られている。
フィナーレでは、黒いマスクを装着したデザイナーの山本耀司さんが登場。いつもと変わらないリラックスした様子で帽子を脱ぎ頭を下げたが、最後に踵を返したとき、着用したジャケットの背中に「HEART?OF?GLASS」という文字が見えた。
今回のショーのために、山本耀司さんをはじめ、スタッフらも渡仏したそうだ。映画界の巨匠、ルキノ?ヴィスコンティが、映画「山猫」のクライマックスで「変わらずに生き残るためには、変わらなければならない」という言葉を残したが、変わらずに日本からパリのランウェイショーに参加するためには、様々な変化や困難があったことだろう。
しかし、そんなことを全く感じさせないコレクションとなった。
「COVID-19だからこそという難しいことではなく、自分の仕事はパリでコレクションを行うことにあります。約40年続けている自分の仕事であり、自分の存在理由でもあります」山本耀司
フィナーレでは、彼へのリスペクトを込めた拍手が長く続いた。
(取材?文?岡本真実)
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